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[スポーツ文化-B-07] eスポーツのプレーは高齢者の実行機能に及ぼす運動効果を増強する(生)
孤独は運動不足や喫煙よりも大きな心身の健康リスクであり、豊かな少子高齢化を模索する我が国が解決すべき喫緊の課題である。1人で実施する身体運動は、高齢者の心身の健康増進に有効だが、孤独解消には直結しない。一方、他者との対戦を楽しむスポーツは孤独解消に寄与しうるものの、プレーに体力水準の壁がある。この壁を乗り越える一策として、ビデオゲームの対戦による電子スポーツ(eスポーツ)が期待される。私どもは既に、eスポーツの対面プレーが絆ホルモン・オキシトシン(OT)を通じて若者の孤独解消に寄与する可能性を報告した(松井ら、2021)。本研究では、eスポーツの対面プレーが孤独解消を通じて高齢者の認知機能に及ぼす習慣的な運動効果を強化すると想定し、これを検証した。
高齢者福祉施設に日常的に通う、うつ傾向のない高齢者31名(男性15名、女性16名、80.7 ± 8.6歳)を、運動(E)群と運動+eスポーツ(E+e)群に割り振った。両群ともに、施設が提供する運動プログラムを週1回以上、3ヶ月間実施した。運動の合間や終了後、E群では会話や脳トレビデオの視聴を、E+e群では対戦形式の太鼓型音楽ゲームやレーシングゲームを約20分間実施した。介入前と3ヶ月後に体力指標(体格、筋力、歩行機能、タッピング)、心理指標(気分、絆指標、実行機能、言語記憶)、生理指標(唾液OT濃度)を評価した。
介入前後の体力指標や言語記憶能に群間の差は認められなかった。一方、実行機能を評価するストループ課題の成績は、E群と比較してE+e群で向上し、心理的絆指標の高まりやOTレベルの上昇と関係することがマクネマー検定により確認された。
本研究により、eスポーツの対面プレーが高齢者の実行機能に及ぼす習慣的な運動の効果を強化できることが初めて確認された。この強化は、OTによる絆形成を通じた孤独解消によるものである可能性がある。
高齢者福祉施設に日常的に通う、うつ傾向のない高齢者31名(男性15名、女性16名、80.7 ± 8.6歳)を、運動(E)群と運動+eスポーツ(E+e)群に割り振った。両群ともに、施設が提供する運動プログラムを週1回以上、3ヶ月間実施した。運動の合間や終了後、E群では会話や脳トレビデオの視聴を、E+e群では対戦形式の太鼓型音楽ゲームやレーシングゲームを約20分間実施した。介入前と3ヶ月後に体力指標(体格、筋力、歩行機能、タッピング)、心理指標(気分、絆指標、実行機能、言語記憶)、生理指標(唾液OT濃度)を評価した。
介入前後の体力指標や言語記憶能に群間の差は認められなかった。一方、実行機能を評価するストループ課題の成績は、E群と比較してE+e群で向上し、心理的絆指標の高まりやOTレベルの上昇と関係することがマクネマー検定により確認された。
本研究により、eスポーツの対面プレーが高齢者の実行機能に及ぼす習慣的な運動の効果を強化できることが初めて確認された。この強化は、OTによる絆形成を通じた孤独解消によるものである可能性がある。