日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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スポーツ文化研究部会 » 【課題C】多様なスポーツ文化の保存・流通・促進をいかに刷新していくか

スポーツ文化研究部会【課題C】口頭発表②

2023年8月31日(木) 13:30 〜 14:29 RY304 (良心館3階RY304番教室)

座長:尾川 翔大(岐阜薬科大学)

13:45 〜 13:59

[スポーツ文化-C-06] ユース選手を対象としたスポーツ・インテグリティ教材の開発と評価(教)

道徳教育における基礎理論の応用

*安永 太地1、藤井 基貴2 (1. 愛知教育大学大学院・静岡大学大学院、2. 静岡大学)

競技スポーツでは暴力,ハラスメントなど様々な問題が起きており,スポーツ・インテグリティの重要性が指摘されている。先行研究を概観すると,こうした競技スポーツでの倫理教育が重要視されているものの,教育実践や教材開発は不十分であると指摘されている。また,従来のスポーツ倫理教育では不正行為を抑制するための「やってはいけないこと」を示す予防倫理に編重している。インテグリティの語源は「完全性」「一貫性」であることからも,理想へと向けられた価値規範や体現すべきあり方を検討する必要がある。すなわち,「どんなスポーツ選手でありたいか」を問いかけ,理想や価値の実現を目指す志向倫理の視点からの教材開発を検討する必要がある。
 他方で,学校教育における道徳科の授業では,倫理的な問題について深く考える力を養うことを目的に,モラルジレンマ授業の実践が多く行われている。この授業では,複数の価値が互いに相容れないものとして対立する「価値葛藤」が重要なものとして位置づけられている。 そこで本研究では,多様な価値に触れる価値明確化ワークショップ「マインド・テン」ならびにモラルジレンマ授業の枠組みを援用したスポーツ倫理教材「レディ・ゴー」を開発し,実践・評価を行う。マインド・テンでは,スポーツと関連する深い価値や考え方を10種類抽出したカード教材であり,参加者は自分にとって大切だと思う価値や考え方に優先順位をつけ,その内容を他者と共有する。次に,レディ・ゴーでは,作成された葛藤する場面について学習者がどちらを選ぶかについて考え,議論する。こうしたワークを通して多様な価値に触れ,自分が「どんなスポーツ選手でありたいか」を深く考えることを目指している。本教材を用いて卓球ユース選手やサッカーユース選手向けに研修を行い,その評価を報告する。