日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題B】競技スポーツにおけるコーチ養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題B】口頭発表②

2023年8月31日(木) 09:00 〜 09:44 RYB2 (良心館地下1階RYB2番教室)

座長:広瀬 統一(早稲田大学)

09:00 〜 09:14

[競技スポーツ-B-05] 女性アスリートの三主徴(FAT)背景要因の実態調査(測,方)

*権野 めぐみ1、寅嶋 静香2,1、野村 照夫1、来田 宣幸1 (1. 京都工芸繊維大学、2. 奈良教育大学)

近年、女性アスリートの三主徴(FAT)問題について様々な明示がなされてきた。しかし、女性アスリートがFATに至る背景要因について議論される場は少ない。そこで、本研究では、FATの背景を探り、実態を明らかにすることを目的とした。
 対象は体重制限及び月経困難を同時に経験したことがあるスポーツ専攻女子大学生2名とした。調査は質問式面接法を用いた。質問内容は、(1)FATに陥った背景、(2)体重制限をした際の競技成績、(3)月経が復活した時期、(4)指導者からのネガティブな要素を含む声掛けの有無、など8項目とした。分析では、3名の専門家による関連要因文言の抽出を行った。
 (1)FATに陥った背景として、指導者から厳しい体重制限を強いられた経験を有していた。また、食事制限が影響を及ぼした可能性が高い「貧血や無月経」が発生していた。(2)体重制限をした際の競技成績は、それまでの成績と比較して低下していた。(3)部活動引退後に月経が復活した。(4)競技成績が下がった際などに指導者からのネガティブな声掛けや指導があった。
 以上(1)~(4)の結果から、指導者の威圧的発言や、FATに対する認識の不足から、選手が不健康な状態へと入らざるを得ない状況が確認された。さらに、2名ともにFATに関しての知識情報の獲得が不足しており、無月経状態を安易に捉えてしまったことが伺えた。
 以上より、選手は、外部圧力から自身を追い込む→極度の食事制限→FATへの流入へ、といった負のスパイラルへと押し込まれた可能性が推察された。また、指導者および選手ともにFATの認識不足であったことから、FAT及びそこに纏わる健康教育の獲得が課題であると示唆された。さらに、どのスポーツ指導者も、成長段階に合わせたトレーニング方法、減量方法などを学ぶことが重要であると考えられた。