09:15 〜 09:29
[競技スポーツ-B-06] 新体操における表現力を高めるためのトレーニングの提案(方)
創作ダンスの指導法を活用して
新体操は、身体難度を伴いながらも、手具操作を必要とすることに特徴があるスポーツで、音楽と動きの調和等を含む芸術的側面も採点に影響する競技である。しかしながら、近年の新体操は、過度な柔軟性や高度な手具操作技術が急速に発展し、技術偏重の傾向が加速した。一方で、新体操の本質ともいえる動きの美しさや芸術的な身体表現力が軽視されてきた。以上のような課題を踏まえ、改訂された新ルールでは、芸術のAスコアがEスコアから独立し、芸術性を重視した競技への転換が図られた。新ルールでは、身体や顔の表現、ダイナミックな変化、音楽にふさわしい動き、動きのつなぎやリズム等、多様な観点から芸術性が採点される。したがって、新ルールに対応した表現力を高めるトレーニングの開発は急務であった。 そこで、多様なテーマから表したいイメージを捉えて動きを創り出す「創作ダンス」の指導手法を参考として、新体操選手に必要な表現力を高めるトレーニングを開発し、その効果を検証することを目的とした。 対象は、新体操の講習会に参加した9~17歳の新体操選手93名である。約2時間半にわたり、表現力を高めることを目的としたトレーニングを指導し、その前後で新体操の表現に関する自己評価についての質問紙調査を実施した。トレーニングの内容は、様々な動きやポーズを選手自身から創出させるための練習、動きのつなぎをスムーズに実施するための練習、手具を持っていない方の手の表現、表情の付け方、曲調にあわせた表現、作品創作技法等であった。その結果、指導後のアンケートにおいて、音楽やリズムに合わせた演技、音楽のイメージにふさわしい動き・表情、技と技のつなぎ、動きの変化等の自己評価が、全ての項目で指導前と比較して明らかに高まった。したがって、本研究で示した創作ダンスの指導法を活用したトレーニングは、新体操選手の表現力を高めるための一助となった可能性が示唆された。