日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題C】ハイパフォーマンススポーツ(トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表⑦

2023年8月31日(木) 13:30 〜 14:29 RY103 (良心館1階RY103番教室)

座長:小西 康仁(東海大学)

14:00 〜 14:14

[競技スポーツ-C-27] 戦前の日本における陸上競技の体力・技術トレーニングに関する一考察(史,人,方)

雑誌「陸上競技」(1928年創刊)を史料として

*大林 太朗1 (1. 筑波大学体育系)

本研究は、戦前の日本における陸上競技(ランニング系種目を中心に)の体力・技術トレーニングについて、雑誌「陸上競技」を主な手掛かりとして明らかにしようとするものである。全日本陸上競技連盟(現在の日本陸連)が発足された大正後期~昭和初期の時代に、当時のアスリートは何を根拠に、どのような鍛錬の日々を送っていたか。本報告では、誰が、どこでどのような記録を残したかという年表的な整理ではなく、むしろ年表には記載されてこなかった選手たちの鍛錬の日々に着目し、彼らが諸外国から何を学び、あるいは日本の地理的・自然的条件下でどのような理論と実践を生み出していたかを明らかにしたい。
手掛かりとなる史料は、雑誌「陸上競技」(陸上競技研究會編輯,一成社)である。1928(昭和3)年の創刊から1943(昭和18)年の廃刊:第16巻第11号に至るまで、国内外の陸上競技界におけるトピックスを扱い続けた専門誌である。創刊号の冒頭文では、その使命について「如何にして国民体育の徹底を期すべきか?如何にして吾等のスポーツを合理的に誘導すべきかに就きて考究すると共にその実現に努めんとする…陸上競技は最も普遍性に富み且つ個性尊重の上に独特の資質を有するが故に、将来益々世に重用せらるるであらうことを固く信ずる」と論じられている。
報告では、岡尾惠市名誉教授(立命館大学)および秩父宮記念スポーツ博物館・図書館の協力を得て収集された記事内容の分析結果を提示し、現在の日本におけるトレーニング科学の一つの系譜を辿ってみたい。