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[10保-口-06] 医療施設に入院する重症心身障害児・者へのアダプテッド・スポーツ実施の工夫に係る有効性の検証
重度・重複障害児スポ・レク活動教室「はなまるキッズ」の活動に着目して
本研究は、筆頭筆者が勤務する医療施設に入院中の医療的ケアを要する重症心身障害児者(以下、重症児者)5名(5~39歳)を対象に、アダプテッド・スポーツ(以下、スポーツ)実施の工夫に係る有効性を証した。本研究で扱ったスポーツ種目は、HBG重度・重複障害児スポ・レク活動教室「はなまるキッズ」で考案されたマットローラー運動であった。選定理由は、筆頭筆者が教室参加した際に重症児者の快表出が確認されたことから、病棟に入院中の重症児者であってもスポーツ参加を可能とし、快表出に繋がるのではないかと考え選定した。また、この種目は一定の場所で実施が可能であり、用具から伝わる揺れや振動を重症児者が体感できる点にも着目した。そこで本研究では、重症児者のスポーツ実施が可能となるよう、①病棟の空きベッドを活用したベッド式マットローラーの作製、②重症児者の胸部へ呼吸器回路を固定するベルトの作製の2点について用具を工夫し実施を試みた。検証にはスポーツ実施中の動画を記録し、重症児者の快表出(表情)、脈拍数、SpO2値を複数名(看護師2名、理学療法士1名、大学研究者1名)で確認した。実施の結果、重症児者の胸部へ呼吸器回路を固定するベルトは、運動中の気管カニューレの抜去事故も無く安定した呼吸状態を維持することができた。これは、気管への刺激による重症児者の苦痛、および気管カニューレ抜去事故の発生リスクを解消できたと考える。動画分析の結果、快反応表出が4名、不快反応表出が1名確認された。また、筋緊張緩和による脈拍数の安定、および普段より多い分泌物の吸引が確認される等、健康面への好影響が確認された。以上のことから、本研究におけるスポーツ実施のための工夫は、医療施設に入院する重症児者が医療機器を使用した状態でのスポーツ参加を可能としたと共に、快表出、および健康面に有効であることが示唆された。