日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

専門領域別研究発表

専門領域別 » 保健

保健/口頭発表②

2023年9月1日(金) 15:10 〜 16:13 RY305 (良心館3階RY305番教室)

座長:物部 博文(横浜国立大学)、片岡 千恵(筑波大学)

15:58 〜 16:13

[10保-口-08] 戦時下における養護訓導無試験検定に関する養成施設について

*三井 登1 (1. 名寄市立大学)

本報告は、養護訓導無試験検定による養成施設の具体像について明らかにすることを目的とする。ここではいくつかある養成施設のうち、日本赤十字社中央病院救護員養成所が併設する養護訓導養成所について検討する。1942年4月1日より、日本赤十字社中央病院は養護訓導保健婦教育規程を施行した。前年の41年、皇国民の養成を主要目的に発足した国民学校では、養護訓導を制度として位置づけた。養護訓導は、将来の健康な兵力と労働力としての皇国民を養成するための政策を実現する末端に位置づいた。日本赤十字社中央病院は、養護訓導養成の一端を担う重要な役割を果たすことになった。
 養護訓導の制度や養成に関する取り上げるべき先行研究には、以下のものがある。杉浦守邦『養護教員の歴史』(東山書房、1985年)は、養護訓導養成制度の変遷や、養成施設の概要について明らかにしている。また、七木田文彦は、瀧澤利行・七木田文彦編集『雑誌「養護」の時代と世界―学校の中で学校看護婦はどう生きたか―』(大空社、2015年)の中で、公文書史料に基づきながら、養護訓導の「量的拡大」に着目し文部省の施策について明らかにしている。養成施設に関する研究には先の杉浦のものがあるが、主に学校史、公報、衛生雑誌を利用した叙述になっている。当時の養成施設側の公的文書史料に基づいて実態を明らかにする課題は残されている。また、養成の実態から、戦争と看護婦養成の密接な関係と、その体制の中で養護訓導が養成されたことを抜きにして、養護訓導養成史を描くことはできないのではないかと考える。当時求められた看護技術の修得と養護訓導の養成について検討することで、このような課題について明らかにすることができればと思う。
(本研究は、科学研究費基盤研究(C)研究代表:三井登19K02480、の研究成果の一部である)