日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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スポーツ人類学/口頭発表②

2023年9月1日(金) 14:30 〜 15:53 RY306 (良心館3階RY306番教室)

座長:石井 浩一(愛媛大学)、大林 太朗(筑波大学)

14:30 〜 14:50

[12人-口-05] 在日韓国人学校における民族スポーツと教育に関する考察

授業と体育祭での取り組みから

*玉川 佳奈妥1 (1. 天理大学大学院)

本研究は、在日韓国人学校を調査対象として、民族スポーツと教育の関わりについて考察したものである。調査対象である在日韓国人学校では、韓国の民族スポーツのテコンドーと伝統舞踊を体育の教材として取り入れており、テコンドーについては課外活動としても行われている。多くの生徒たちのルーツにつながる韓国の伝統文化として、体育の授業や課外活動で民族スポーツを実践することは、民族アイデンティティを形成することにつながっていると考える。したがって、本研究では、授業実践とその成果を発表する体育祭での観察を通じて、民族スポーツの教材化の意味とアイデンティティ形成の一端を明らかにすることを目的とする。研究方法は、日本の学習指導要領と韓国の学習指導要領に相当する「教育課程」、また、民族スポーツを教材とした教育に関する文献研究に加え、調査対象校の教育現場での授業と特別活動の体育祭の観察および教員や指導者らへのインタビューである。
調査対象であるA校では、高校の時間割のなかで週に1時間、男子はテコンドー、女子は伝統舞踊を「特別体育」として実践している。さらに、小・中・高等学校が合同で行う体育祭では、生徒たちが民族衣装を身につけて登場し、女子は伝統舞踊、男子はテコンドーの演舞を披露した。テコンドーの演舞のプログラムでは、部員が主体となり各種の技を次々と繰り広げ、板を割るなどの華麗な技も披露した。それぞれの技や演舞に対して、大きな声援や拍手が観客から送られた。
こうした一連の授業での民族スポーツへの取り組みと、その成果を披露し称賛を得る体育祭という機会は、韓国文化を体得するだけでなく、それらを見せることで自らのルーツの確認と他者からの承認を得ることができる。つまり、自文化として表現する立ち位置と、他者を魅せることができるというプライドの獲得は、民族アイデンティティの形成の一端としてとらえることができよう。