日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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バイオメカニクス/口頭発表①

2023年9月1日(金) 14:40 〜 15:54 RYB1 (良心館地下1階RYB1番教室)

座長:小池 関也(筑波大学)

15:40 〜 15:54

[05バ-口-05] 野球打撃におけるバットのスイング速度とボールインパクトの正確性との関係

*森下 義隆1、中島 大貴2 (1. 新潟医療福祉大学、2. 国立スポーツ科学センター)

野球打撃において打球速度を高めるためには、可能な限りバットのスイング速度を高め、バット芯でボールを捉える技能が求められる。しかしながら、一般に動作のスピードと達成すべき課題の正確性は反比例の関係(speed-accuracy trade-off)にあることが知られている。本研究では、打球速度を最大化するための方策を検討するために、スイング速度とボールインパクトの正確性との関係を明らかにすることを目的とした。男性の野球経験者11名と未経験者8名を対象に実験を行った。被験者にはバット芯でボールを捉えることを重視した条件(正確性条件)とスイング速度を高めることを重視した条件(スピード条件)でティー打撃をそれぞれ8~10試技行わせた。高速度カメラ(1kHz)の映像からバットとボールの運動学的パラメータおよびインパクトパラメータを算出し、野球経験と打撃条件を要因とする二元配置分散分析を行った。スイング速度は打撃条件の主効果が認められ、スピード条件は正確性条件よりも大きいことが示された(p < 0.001)。バットの短軸方向と長軸方向におけるバット芯に対するインパクト位置は、短軸方向のみ両要因の主効果が認められ、経験者および正確性条件の方がバット芯に近い位置で打撃していることが示された(ともにp < 0.01)。また、各軸方向のバット芯に対するインパクト位置の標準偏差は、ともに野球経験の主効果が認められた(ともにp < 0.001)ことから、経験者は打撃条件に関わらずインパクト位置のばらつきが未経験者よりも小さいことが明らかとなった。これらの結果から、ティー打撃においてスイング速度を高めようとする動作はバットの短軸方向においてインパクト位置の誤差を増加させるが、大きなスイング速度で繰り返し練習することでその誤差が小さくなり、一定のスイングでインパクトできるようになると推察される。