日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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バイオメカニクス/口頭発表②

2023年9月1日(金) 14:40 〜 15:54 RYB2 (良心館地下1階RYB2番教室)

座長:進矢 正宏(広島大学)

14:40 〜 14:54

[05バ-口-06] 運動探索の過程に依存した上肢による新規運動の学習

*河野 友哉1、神崎 素樹1、萩生 翔大1 (1. 京都大学)

ヒトの運動学習は、すでに獲得した運動を微修正して新しい環境に運動を適応させる運動適応という側面が中心に研究されてきた(Krakauer et al, 2019, Compr Physiol.)。しかし、これまで学習した知識を活用できない全く新しい環境における運動学習(新規学習)については、未だ十分な理解が得られていない。新規学習では、運動目標を達成するために、無数の選択肢の中から必要な行動を探索する過程が重要であると考えられる。そこで本研究では、運動の探索方法の違いが、新規学習に与える影響を明らかにすることを目的とした。 実験は32名の健常成人を対象として実施した。実験課題は、両手の母指でゲームパッドのジョイスティックを操作し、画面上のカーソルを的に素早く到達させる運動課題とした。スティックの動作は2リンクの仮想腕の関節トルク量に対応しており、画面上のカーソル位置は、仮想腕の先端位置に対応するものとした。練習ブロックでは、初期位置からアーチ状の的にカーソルを到達させ、広範囲を狙って運動することを許容したbar条件と、小さな的にカーソルを到達させ目標となる運動の範囲を制約したcircle条件を設定して探索過程を操作し、実験参加者を2グループに分けて実施した。テストブロックは、5方向の小さな的を狙う課題とした。テストブロックでは到達時間をもとに成功失敗を判定し、成功回数を両条件間で比較した。また実験では、ジョイスティックの使用経験についても調査を実施した。 実験の結果、2つの練習条件間で成功回数に有意な差は見られなかった。しかし、スティックの使用経験を考慮して統計分析をしたところ、使用経験のないグループ内ではcircle条件の方が、成功回数が多いことが明らかとなった。本研究の結果から、全く新しい環境での運動学習過程は、運動の探索方法に影響されることが示唆された。