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[05バ-口-07] 転倒リスクの大きさに応じた二足立位での目標指向型運動の制御
我々の二足立位姿勢は、転倒を防ぐために身体重心を支持基底面内で維持するように制御されている。一方で、目標に向かった運動を同時に行う際、身体重心を支持基底面の中心から大きく逸脱させ転倒リスクの高い姿勢を選択することがある。球技スポーツ中に、コートの外に出そうな球に触るために転倒寸前の姿勢をとることが例として挙げられる。しかし、目標指向型運動の制御における転倒リスクの影響については十分な理解が得られていない。そこで本研究では、様々な転倒リスク下での目標指向型運動の制御を明らかにすることを目的とした。身長168~173㎝の健常成人20名を対象に実験を行った。参加者は両足を揃えて立ち、体幹部の左右方向の動きに対応して画面上を動くカーソルを操作し、画面上方から様々な位置に次々に落下する標的にカーソルを到達させる課題を行った。体幹部の動きは、動作計測システムにより実時間で取得した頭・胸・腰部の平均位置とした。標的は静止立位時の正中線(基準点)から左右30㎝の範囲内に設定し、基準点から標的の落下位置までの距離に応じた転倒リスクが課題中に生じる環境を作り出した。標的の落下速度は3条件を設け、各条件400回の到達課題を実施した。標的とカーソル位置の差を運動誤差として定量した。その結果、基準点付近では標的位置にかかわらず誤差が安定して小さく、基準点から一定距離離れた範囲では標的位置に応じて誤差が増大することが明らかとなった。線形混合効果モデルを用いた統計分析により、直前の標的位置に応じたカーソルの移動距離にかかわらず、標的位置が誤差に影響を与えることが示された。また標的の落下開始時にカーソルが基準点から外側に位置する際、標的位置に関係なくカーソルを基準点側へ動かすことが確認された。本研究により、二足立位制御時には、一定の転倒リスクを超えた場合にのみ目標指向型運動が変化することが示唆された。