日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

専門領域別研究発表

専門領域別 » 体育心理学

体育心理学/口頭発表①

2023年9月1日(金) 15:10 〜 16:09 RY107 (良心館1階RY107番教室)

座長:松田 晃二郞(熊本学園大学)

15:10 〜 15:29

[03心-口-01] アスリートの反芻・省察がAcceptance & Commitment Therapy(ACT)におけるコア・行動的プロセスに及ぼす影響

認知的フュージョンの媒介効果に着目して

*内川 義弘1、高井 秀明2 (1. 日本体育大学大学院体育学研究科、2. 日本体育大学体育学部)

近年、ACTを用いたアスリートへのメンタルトレーニングが実施されているが、競技力向上への効果は不確かである(Noetel et al.,2019)。アスリートは最終的に心的健康の促進ではなく、競技力向上を目指していることから、ACTのコア・行動的プロセスである価値づけ・コミットメントは、アスリートにACTを用いたメンタルトレーニングを実施する上で重要なプロセスといえよう。しかし、これまでにアスリートの価値づけ・コミットメントとパーソナリティとの関連について検討した研究は見受けられない。本研究では、パーソナリティ特性として反芻と省察に着目し、これらがアスリートの価値づけ・コミットメントに及ぼす影響について検討することとした。また、ACTにおける認知的フュージョンは、思考と現実の混同を起こすことで、行動的プロセスを阻害するといわれている(嶋ほか、2016)。そこで本研究では、認知的フュージョンの媒介効果を仮定し、反芻・省察が価値づけ・コミットメントに及ぼす影響について検討した。調査対象者は、A大学体育専攻学生294名(男性165名、女性129名、平均年齢20.1±0.3歳)であり、Values Clarification Questionnaire(齋藤ほか、2017)、改訂Cognitive Fusion Questionnaire 13項目版(嶋ほか、2016)、Rumination Reflection Questionnaire日本語版(高野・丹野、2008)に回答した。媒介分析の結果、反芻から価値づけ・コミットメントへの直接効果は認められなかったが、認知的フュージョンを介しての間接効果は有意な負の影響を示した(β=-.293,p<.05)。したがって、アスリートの反芻は認知的フュージョンを介し、間接的に価値づけ・コミットされた行為を阻害することが明らかになった。