日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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体育心理学/口頭発表③

2023年9月1日(金) 16:15 〜 17:34 RY107 (良心館1階RY107番教室)

座長:山本 真史(日本福祉大学)

16:15 〜 16:34

[03心-口-07] 四足歩行哺乳類の歩容類型における杖を用いたヒトの歩容の位置づけ

*越水 悠介1、横山 慶子2、山本 裕二3、木島 章文4 (1. 山梨大学大学院医工農学総合教育生命医科学部、2. 名古屋大学総合保健体育科学センター、3. 新潟医療福祉大学心理健康学科、4. 山梨大学大学院総合研究部教育学域)

登山の際にトレッキングポールを使用すると推進力が増進し、姿勢のバランス維持が容易になる。このとき登山者が踏み越える段差に応じて手足の協調が変化する。こうした前肢と後肢の機能的な協応は様々な四足歩行動物にもみられるが、その歩容は動物種によって異なる。そこで著者は、本来は2足歩行動物であるヒトに杖をもたせたときの歩容と四足歩行動物の歩容との類似性を、Hildebrand(1965)らを参考に検討したいと考えた。 男子学生10名に10kgの錘を入れたザックを背負わせ、実験者の合図で段上へ登上させた。4脚のうち1つの脚が接地している時間が歩行1周期に占める割合(duty factor)、左右一方の後脚の着地時刻と同側の前脚の着地時刻の時間差(diagonality)との関係性を分析したところ、duty factorの個体差に対してdiagonalityの個体差が一定の傾きを持つ負の関数(y=100-x)で回帰された。このことから荷重条件下での杖歩行には馬や鹿など胴体に対して脚が短い動物と同じ構造があることがわかった。以上から、二足歩行動物であるヒトは、Diagonal-coupletsによって自らの重心を前進させる際、重心の縦方向への不要な変動を抑制させていることが示唆された。 この実験試技は1段のみの登上であった。そのため歩容が非対称にならざるをえず、さらには杖への荷重に大きな個人差が見受けられた。こうした問題を解消すべく、自然なハイキングコース環境で特定の段数を持つ階段を登上する歩容を撮影し、その記録映像から歩容の変化を確認した結果、疲労度合いに関わらず自然の歩行路においても馬に近い歩容が見られた。さらに段差が急になると、対側で前後脚が同期する歩容が同側同期に切り替わり、同側の前脚と後脚を短い時間差で踏み込むことで垂直方向の推進力を前脚と後脚から同時に得る方略をとった。