日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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体育心理学/口頭発表③

2023年9月1日(金) 16:15 〜 17:34 RY107 (良心館1階RY107番教室)

座長:山本 真史(日本福祉大学)

17:15 〜 17:34

[03心-口-10] 陸上競技長距離走の授業における目標ペース変動練習の効果

*小笠原 倫汰1、木島 章文2 (1. 東京大学、2. 山梨大学)

中学校保健体育における長距離走の授業では、「ペースを守って走ること」や「自己に適したペースを維持して走ること」などのペースに対する技能目標が設定されている(文部科学省、2017)。先行研究では、これらを踏まえイーブンペース走を手立てとした実践が行われており、走能力の向上や長距離走に対する好意的な態度の変容があったことが報告されている。一方、近年の運動学習研究においては、学習における探索プロセスの重要性が強調されている。そこで本研究では、これまでの実践に対するさらなる工夫として、練習における目標ペースを変動させることにより、走行ペースと運動感覚の対応関係をより広い範囲で探索するプロセスの導入を試み、ペース変動の有無が長距離走の所要タイム並びにペース再生に及ぼす影響ついて実験的に検討した。参加者は公立中学校3年生女子44名、男子63名を対象とした。初めに事前テストとして参加者全員に2000m走を課し、その後200mのペース再生練習を実施した。事前テストから導出された目標タイムのみを指示した群(F群)、導出された目標タイムを変動させて指示した群(R群)の2群に分け、指示されたタイム丁度にゴールすることを狙って200mを走るよう教示を与えた。これを1セッションにつき10回課し、1週間で計3セッション実施した。練習後、事後テストとして再び2000m走を課し、練習効果を検討した。実験の結果、両群で2000m走のタイムは有意に向上した。特にR群はF群に比べて有意なタイムの短縮がもたらされ、記録別ではR群上位・中位、F群上位において2000m走のタイム短縮が有意にみられた。以上の結果から、本実験におけるペース再生練習は、長距離走のタイムの向上をもたらす可能性があり、特に目標タイムのみを狙った練習よりもその周辺のタイムを探索的に経験することによって更なる記録の向上につながることが示唆された。