日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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体育科教育学/口頭発表①

2023年9月1日(金) 10:00 〜 11:19 RY201 (良心館2階RY201番教室)

座長:梅澤 秋久(横浜国立大学)、加登本 仁(安田女子大学)

10:00 〜 10:15

[11教-口-01] 保健体育におけるトランスジェンダーが求める配慮・対応

当事者の経験に着目して

*大城 葵1、濱本 想子2 (1. 那覇市立小禄中学校、2. 公立大学法人名桜大学)

本研究では、18歳以上のトランスジェンダー(MtF、FtM、Xジェンダー)を対象に、保健体育授業での「うれしかった配慮・対応」「不快な経験」「求めていた配慮・対応」について調査し、これからの保健体育授業で必要な配慮・対応を検討することを目的とした。匿名式Webアンケート調査を行い、小学校から高校までの保健体育授業での経験について選択式及び自由記述で回答を求めた。得られたデータは、クロス集計とテキスト分析を行った。アンケート回答数は、28件であった。集計の結果、うれしかった配慮・対応があったとの回答は少なく、半数以上のトランスジェンダーが保健体育授業で不快な経験をしたことがあると回答していた。また、自由記述の分析結果より、保健授業でのうれしかった配慮・対応として、ジェンダーについての特別講義を通し、自分の在り方を学んだことなどが挙げられた。一方、不快な経験として男女別習で授業を行うことで自身の身体的性を自覚してしまうことに対する不快感が多かった。体育授業でのうれしかった配慮・対応としては、実技に代わってレポート等の代替措置や別室での着替え対応などが挙げられた。保健授業と比較して、うれしかった配慮・対応に関する記述が多かった。一方、不快な経験としては男女別での整列や水泳授業に関する記載が多かった。そして、これからの保健体育の両授業で必要な配慮・対応としては、①教師のLGBTQ+に関する知識・認識の向上、②ジェンダー・ステレオタイプの発言を行わないこと、③当事者が配慮・対応を求めやすい環境をつくることが挙げられた。保健授業では、①男女共習でヒトの体に起こる現象の教授、②多様な性の取り上げ、③人権的アプローチに基づいた包括的セクシュアリティ教育の取り入れが挙げられた。体育授業では、①性自認を尊重した種目選択、②当事者にあった更衣室の整備、③水着や体操服の選択の自由が挙げられた。