日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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体育哲学/口頭発表②

2023年9月1日(金) 13:15 〜 14:16 RY203 (良心館2階RY203番教室)

座長:髙橋 徹(岡山大学)

13:46 〜 14:16

[00哲-口-04] スポーツ概念の競争的性格と教育的性格に関する批判的検討

*佐藤 雄哉1 (1. 国士舘大学)

2022年、全日本柔道連盟は「勝利至上主義」の蔓延が心身の発達を阻害するとして、全国小学生学年別柔道大会を廃止した。それはスポーツの「教育的性格」が、競争の過熱に伴い希薄化していったことを公に認める、歴史的な事例と言えよう。そしてそのような事例は「競争のない運動会」や「競技会へ参加しないスポーツ少年団」等、スポーツ活動から「競争的性格」を取り除こうとする動きに波及していくこともある。もちろん、これらの活動の大半は心身の成熟が不十分である学童期を対象としており、子どもの成長段階において競争の過熱が注意すべき問題であることに疑いの余地はない。但し、競争と教育の分離を意図した活動が散見されるという事実からは、スポーツ界における競争と教育の均衡が近年崩れつつある現状が見て取れよう。スポーツの競争概念は、その本来的な姿を探る上で有用な視点であり、またそれは教育的性格としての運動の楽しさや、充実感を体験することの大切さを問う上でも重要である。すなわち、競争概念はスポーツにおいて、本来的かつ教育可能性を補完する概念として捉えることもできるのである。本研究は、スポーツの競争概念を批判的に検討しつつ、スポーツ活動がどのように人間を育み形成していくのかという問題を、「型の概念」「身体技法の洗練化」「優劣を超越する競争の作法」という3つの視点から考察することを目的とする。そしてそれは、アスリートの勝利至上主義を経て生起する「競技スポーツによる人間形成」試論でもある。