日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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体育哲学/口頭発表④

2023年9月1日(金) 15:25 〜 16:57 RY203 (良心館2階RY203番教室)

座長:佐々木 究(京都産業大学)

15:56 〜 16:26

[00哲-口-08] 計算理論からみたスポーツ科学の性質

*齋藤 健治1 (1. 名古屋学院大学)

スポーツ科学とは何か?スポーツ科学の目的は何か?このような問いかけは、スポーツ科学という分野が市民権を得た当初からあった。現在では細分化された学術分野であるとはいえ、その成り立ちの経緯から判断すると、医学的なサポートのもとに選手の競技力向上を図ろうとするところに、一つの目的があるといえるだろう。本研究では、種々スポーツ科学の目的、使命が語られる中、「競技力の向上」がスポーツ科学の目的である、とする立ち位置で、計算理論の観点からその性質を考察しようとするものである。 「計算」とは、四則演算だけでなく人間の推測・判断やあらゆる作業を指す、あるいはあらゆるものが「計算」に置き換えられる、という視点に立てば、スポーツ科学の営みも「計算」に落とし込めるのではないかと考えるのが自然である。ある問題設定がなされた場合、当然ながらその問題の解が求められることが期待される。「競技力の向上」という問題設に対する解は、向上する(Yes)か向上しない(No)か、である。計算理論の点からこの問題を定式化した場合、その解がYesかNoか、ということが気になるが、そもそも解が求まるかどうか、という計算可能・不能が先に問題となる。計算不能となった場合、YesかNoか言及できない。計算プログラム的にいうと、たとえばWhileルーチンをループし続けることになる。これは、条件設定の違いこそあっても全体としては同じような研究を延々と繰り返すことと同等である。仮に、計算可能であるとなった場合、現実的な時間で解が求まるかどうかという問題に直面する。「競技力の向上」に関係する条件が増えれば増えるほど、解への到達が困難になることは容易に想像される。原理的に解は求まると認められたとしても、その解は現実的な時間で求まらない、つまり、選手寿命を遙かに超える時間が必要となり、計算の意味をなさないという問題も考えられる。