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[08測-口-05] 柔道の頭部外傷を引き起こす大外刈りの解明
【目的】柔道では、2022年に脳震盪が7件、急性硬膜下血腫等が5件(1名死亡)報告され、未だに重篤な頭部外傷が発生している。頭部外傷の研究では、投げ技による頭部外傷の危険性を検証するものが多く、どのような大外刈りの投げ方が頭部外傷の危険性を高めるのかは解明されていない。そこで本研究は、頭部外傷の危険性が高まる大外刈りの投げ方を解明することを目的とした。【方法】被験者は男性柔道熟練者10名とした。被験者を投げる実験補助者は大外刈りの得意な男性柔道熟練者1名とした。実験補助者は、一般的な大外刈りと投げる者が身体を捻らない大外刈り(頭部外傷の危険性がある想定した大外刈り)でヘッドギアを付けた被験者をそれぞれ3回マットの上で投げた。その際、加速度計と慣性式モーションキャプチャで被験者の頭部角速度と挙動を測定した。本研究は、びわこ成蹊スポーツ大学図書・学術委員会学術研究倫理専門委員会で承認されたものである(成ス大第17号)。【結果および考察】投げる者が身体を捻らない大外刈りにおける投げられる者の頭部角加速度(371.9 rad/s2)は一般的な大外刈り(231.1 rad/s2)よりも高かったが、有意な差は見られなかった(p=0.28)。これは投げる者が身体を捻らない大外刈りの投げ方が一定でなかったことが原因であると考えられる。また、投げられる者の身長や体重の違いが影響した可能性が考えられる。今後、投げる者が身体を捻らない大外刈りの投げ方の熟練度を高めることや投げられる者の身長や体重を同様にすることが実験を成功させるために必要である。【付記】本研究は、びわこ成蹊スポーツ大学2022年度研究課題促進助成費および2022年度カシオ科学振興財団第40回研究助成を受けたものである。【利益相反】本研究に関して、開示すべき利益相反状態は存在しない。