日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(奇数演題)/ポスター発表

2023年9月1日(金) 10:00 〜 11:00 RY205 (良心館2階RY205番教室)

[03心-ポ-37] 大学女子サッカーにおける前十字靭帯損傷前後の心理状態の変化と個人差

*雨宮 怜1、橋本 恵里2 (1. 筑波大学、2. ノルディーア北海道)


本研究の目的は、大学女子サッカー選手を対象として、ACL損傷初発時における心理状態の変動過程のタイプを明らかにし、受傷の予後が悪いタイプの特徴について、リハビリ時のソーシャルサポートに注目して検討することであった。
研究対象者は、過去にACL損傷を経験し、現在復帰している大学女子サッカー選手91名(平均年齢=20.08歳、SD=±1.16)とした。回顧式の質問紙調査を行い、上野・小塩(2014)を参考とした、ACL損傷初発時の受傷前から受傷直後、リハビリ前期と中期、復帰後などを含む6時点にわたる心理的状態:興奮度合いの変動を記載するグラフ(以下、心理的変動グラフと記述)を記入するよう依頼した。また、リハビリ時の周囲の者からの支援について測定するために、Social Support Questionnaire for Injured Athlete(Katagami et al,2020)への回答を求めた。
心理的変動グラフのデータをもとに階層的クラスタ分析を行った結果、ACL損傷前から復帰までの心理状態の変動タイプとして、「受傷後興奮型」、「受傷前興奮型」、「受傷予後不調型(ACL損傷時から復帰の時点にかけて心理状態:興奮度合いが下がっている)」、「ACL損傷時興奮型」の4つに分けられた。 次に、「受傷予後不調型」とその他のクラスタ間におけるソーシャルサポートの差異について検討した結果、「受傷予後不調型」は、他のクラスタよりも回復・復帰サポートの得点が有意に低いことが確認された(p < .05, d = .78)。
以上、本研究の結果により、ACL損傷初発時において、大学女子サッカー選手が経験する心理的な状態の変動には4つのタイプがあることや、受傷後の予後が不良な選手の特徴が明らかとなった。今後、このような特徴を有する選手に対する支援が、ACL損傷発生時の良好な予後に繋がる可能性がある。