日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(奇数演題)/ポスター発表

2023年9月1日(金) 10:00 〜 11:00 RY205 (良心館2階RY205番教室)

[03心-ポ-45] 心理的介入プログラムが 個人競技の集団効力感に及ぼす影響

*西川 明花1、笹塲 育子2 (1. 立命館大学大学院、2. 立命館大学)


本研究では、個人競技の中でも集団で行動している陸上パートに着目し、集団効力感の向上が及ぼす、行動や競技成績の変化について明らかにすることを目的として、体育会男女陸上競技部投擲パート9名に対し、約10か月間の心理的介入を実施した。集団効力感構成要素である、成功体験、代理経験、言語的説得の獲得を目的とした介入プログラムでは「集団効力感尺度」、「自己学習調整尺度」、「パート内意識調査」によるアンケート調査および、観察をもとにした行動変容と、競技成績による効果検証を実施した。 本研究結果として、「集団効力感尺度」では、介入後に得点の低下がみられたが、有意差は認められなかった。背景として、陸上競技は協調性の高さが競技力を阻害する可能性があることから、集団効力感の向上が上手く機能しなかった可能性が考えられる。一方、言語的説得に着目した取り組みの効果として、個々の能力や役割を(再)認識でき、またその過程を共有したことによって、選手同士の相互理解につながった。その後、全員で課題の解決に向けて取り組むなど、多くの主体的、積極的な行動がみられるようになった結果「自己学習調整尺度」では、介入後に9名中6名の得点が向上したが、有意差は認められなかった。「パート内意識調査」では、集団効力感同様に全員のパート内の好感度や帰属意識が低下していた。最後に、本研究の集団効力感主要構成要素に着目した介入プログラムによって、練習時の成功体験や代理経験の獲得頻度が増加し、個々の技術向上につながったと考えられる。その結果、競技成績では9名中5名が自己記録を更新し、競技会における出場ラウンドも向上した。 以上のことから、本研究の集団効力感を目的とした心理的介入プログラムの実施は、直接的な集団効力感の向上には繋がらなかったが、9名中6名の自己学習調整能力の向上と、9名中5名の自己記録更新など、個人の競技力向上に貢献した。