日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(奇数演題)/ポスター発表

2023年9月1日(金) 10:00 〜 11:00 RY205 (良心館2階RY205番教室)

[03心-ポ-53] 青年期アスリートの自己成長力とソーシャルサポート

アスリート育成における指導者の役割

*片上 絵梨子1 (1. 共立女子大学)


[背景と目的] アスリートのメンタルヘルス維持を阻害する主な要因として、競技ストレス、個人ストレス、組織ストレスが挙げられている(IOC, 2021)。これらのストレス要因に関連する問題に直面した際、アスリートは自己調整や問題対処などによりメンタルヘルスを維持して問題状況の改善に向けて主体的に働きかけるだけでなく、その一連の経験を自らの成長に繋げていく力が求められる。自ら自分自身を伸ばしていこうとする力、すなわち自己成長力(速水ら, 1997)を身につけることは、競技内外で経験し得る様々な困難場面に対処しつつ、競技者としての能力を最大限化させることにもつながる。本研究では、アスリートの自己成長力促進要因として指導者のソーシャルサポートに着目し、指導者の視点から自己成長力がパフォーマンスや競技生活に与える影響や、その過程における指導者及び周囲の他者の望ましい関わり方や役割を明らかにすることを目的とした。 [方法] 中学生・高校生に10年以上の指導経験を持つ野球指導者2名を調査対象に選定し、半構造化面接を実施した。インタビュー逐語化データは、 NVivoを用いたテーマ分析 (Braun & Clarke, 2006)を行った。 [結果] 自己成長力を持つアスリートの特徴として、多面的洞察力(e.g.練習の狙いに気づく力)柔軟な発想力(e.g.応用的な情報転換力)、継続的な行動実行力(e.g.勤勉さ)、状況改善力(e.g.情報収集力)、変化に対する柔軟な態度(e.g.助言活用)などが挙げられた。また、自己成長力養成過程において重要な外的な要因としては、競技内外の多様な経験を促すこと(e.g.スポーツ以外の習い事)や競技環境の整備などが挙げられた。今後は調査対象者を増やし、得られた知見をもとにアスリートの自己成長力養成につながる指導者及び周囲の他者の過不足のない関わり方について検討していく。