The 73rd Conference of the Japan Society of Physical Education, Health and Sports Sciences

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Poster (Subdiscipline)

専門領域別 » 体育心理学

体育心理学(奇数演題)/ポスター発表

Fri. Sep 1, 2023 10:00 AM - 11:00 AM RY205 (良心館2階RY205番教室)

[03心-ポ-65] ジャグリングにおけるボール軌道視認の重要性

バーチャルリアリティ環境下で実現した3ボールカスケードを対象として

*Junki Inoue1,2, Ryo Watanabe2, Kaito Shimizu2, Takuma Umemori2, Takahiro Higuchi2 (1. Sony Group Corporation, 2. Tokyo Metropolitan University)


ジャグリングの遂行には,視覚情報に基づくボールの空間位置の把握が重要である。視線研究によると,パフォーマーは自身が投げたボール軌道の頂点付近を見ていることから,特に重要な情報源であると推察される。発表者らは,バーチャルリアリティ(VR)技術と3Dモーションキャプチャ技術を統合し,VR環境下で現実のボールを使ったジャグリングができるシステムを開発した。ジャグリング中にボール映像を一定時間遮断することで,頂点付近のボール軌道をどの程度視認できることが重要なのか検証した。
 ジャグリング経験者2名を対象とした。対象者はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着した状態で,ジャグリングの基本課題である3ボールカスケードを20回継続することが求められた。HMD上では,手の映像がHMD内蔵カメラの情報に基づいて実際の手と同じ位置に,ボールの映像が3Dモーションキャプチャの情報に基づいて実際のボールと同じ位置に提示された。実験条件は,全てのボール軌道が見える1条件,頂点付近でボール映像が一定時間遮断される4条件とした。
 実験の結果,遮断時間が300ms以上の条件において継続回数が著しく減少した。この結果は,頂点付近の300ms程度の視覚情報が,ボールの落下軌道予測に重要なフィードバックを提供し,投球や捕球タイミングの調整に不可欠である可能性を示唆した。また,ヒトの瞬きに要する時間が200ms程度であることから,200ms程度の視覚遮断であればボールの軌道予測を補完できる可能性が示唆された。
 本研究で開発したシステムは,VR環境下で現実のボールを用いたパフォーマンスを可能とし,その汎用性が期待される。今後の研究では,他の運動やスポーツにおいても重要な視覚情報を実験的に探索する。更に,VR技術を用いた実践的なトレーニングツールの開発を通じて,運動パフォーマンスの向上やスポーツ教育への応用を目指す。