日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(偶数演題)/ポスター発表

2023年9月1日(金) 11:00 〜 12:00 RY205 (良心館2階RY205番教室)

[03心-ポ-64] スポーツ版実行機能質問紙の妥当性

ストループテストによる検討

*浦 佑大1、高井 秀明2 (1. IPU・環太平洋大学、2. 日本体育大学)


スポーツにおけるパフォーマンス発揮には、高次認知機能である実行機能が関与している。実行機能の測定方法としては種々のテストバッテリーが存在するが、実施者の専門的知識の必要性と対象者の高い認知的負荷は、スポーツ現場でのテストバッテリーの活用を妨げる要因となる。そこで、浦・高井(2022)は、アスリートの実行機能を簡易的に測定するための尺度として「スポーツ版実行機能質問紙」を作成している。本研究では、スポーツ版実行機能質問紙の下位尺度得点とストループテストの相関関係を検討し、スポーツ版実行機能質問紙の妥当性を確認することとした。実験参加者は、体育学を専攻する大学生・大学院生12名(男性5名、女性7名、平均年齢21.83±1.34歳)であった。実験参加者には、スポーツ版実行機能質問紙への回答を求め、実験課題としてe-primeによって作成したストループテストを実施させた。ストループテストでは、刺激として「あか」「みどり」「あお」「きいろ」がそれぞれ黒色、赤色、緑色、青色、黄色で着色された画像20種、各色のパッチ画像4種の計24種類の画像を用いた。課題は、ストループ条件と逆ストループ条件の2条件とした。スポーツ版実行機能質問紙の各下位尺度得点とストループ干渉率との相関分析の結果、抑制下位尺度にのみ有意な強い負の相関が確認され(r=-.71、p<.01)、注意の維持、熱中、計画、自己意識、効率、切り替えには有意な相関関係は確認されなかった。この結果は、抑制得点の高い者ほどストループ干渉を抑制できることを意味する。ストループテストは、優勢的・自動的な反応を文脈に応じて抑制する能力が求められる課題であるため(諏訪部・征矢、2014)、本研究では抑制にのみ相関関係が確認されたものと推察される。したがって、実行機能質問紙の「抑制」下位尺度は、十分な妥当性を有しているといえるだろう。