[08測-ポ-16] 三次元動作解析を用いた自動的な体幹側屈可動域の評価方法についての予備的研究
体幹側屈動作時の意識条件の設定
体幹部と胸郭の可動域や柔軟性は、高強度のパフォーマンスが求められる競技において四肢と体幹の運動連鎖のために重要な能力である。しかし、体幹部の可動域評価の結果と競技成績との関係についての報告は数少なく、体幹部の可動域評価法に統一した方法がみられない。そこで本研究では、自動的な体幹部の側屈可動域のテスト法を考案し、評価上の留意点を明らかにすることを目的とした。
健常な男性3名を対象者とした。対象者は椅子に着座し、左右2回ずつ側屈をおこなった。各自のペースで側屈させ、最大側屈位に達したところで2~3秒静止させた。対象者は、脚や膝が大きく動かないようボールを膝の間に挟み、胸の前で手掌が肩に触れる姿勢とした。動作時の意識条件として、(1)胸部を側屈させる意識、(2)肋骨下部を側屈させる意識、(3)腰部を側屈させる意識の3条件で実施した。データの収集は光学式三次元動作解析装置(V120Duo、OptiTrack社)を用い、第7頸椎から仙骨までの脊柱上に15個の反射マーカーを均等に貼付した。120 fpsで三次元座標を取得し、脊柱の最下端セグメントと最上端セグメントのなす角度を側屈総角度とし、隣接するセグメント間のなす側屈角度も求めた。
側屈角度は、胸部を側屈させる意識条件では左側が33.7 ± 12.9度、右側が36.2 ± 7.1度であった。肋骨下部を側屈させる意識条件では左側が37.9 ± 12.9度、右側が46.7 ± 10.7度であった。腰部を側屈させる意識条件では左側が50.8 ± 6.8度、右側が52.2 ± 11.7度であった。隣接するセグメント間のなす側屈角度の最大値は意識条件により異なった。
この結果から、側屈角度の測定においては、体幹のどの部分から側屈するかの意識により動作が異なることが示唆され、側屈角度の測定には条件の統制が重要であり、より適切な測定法を検討する必要性があることが明らかとなった。