[11教-ポ-05] マット運動における多様な感覚経験とICTを活用した学習教材の効果
学習者の特性と学習行動の関係の検討
近年、ICTや教育ビッグデータの効果的な活用によって、個別最適化された学びの実現が求められている。そこで、個別最適化された運動学習の実現を目指した、感覚経験型学習法(松浦ら,2018)のICT教材を開発した。本研究では、学習者の特性と学習行動の関係を調査するため、大学1年生52名を対象に、開発した教材を用いて全10回の器械運動の授業を実施した。学習者の特性は、運動有能感測定尺度(岡澤,1996)および、Felderの学習スタイル別特徴(Felder,1995)を使用して検討した。授業中の学習行動についてはICT教材を使用して記録し、授業最終日に形成的授業評価を実施した。その結果、学習者の学習スタイルが視覚的・言語的のどちらであっても、「自身が認知している学習スタイル」と「授業中に実践している学習行動に対する認知」が一致していた場合は、運動有能感が高い者の人数が有意に多く、不一致の場合は運動有能感が低い者の人数が有意に多いことが確認された(p = .028)。これらのことから、学習スタイルの好みよりも、認知している学習スタイルと学習行動が一致することが、運動有能感の高さに関連していると考えられる。また、授業中のICT教材の使用について、「技の習得」および「自分の能力に応じた練習」に活用できたと回答した者が有意に多かった(ps < .001)。加えて、学習者が「挑戦した技の数」や「新たに習得した技の数」に関して、運動有能感の高群・低群の間に有意差は見られなかった。以上の結果から、本ICT教材は学習スタイルや運動有能感の高低に関わらず、器械運動での技の習得に活用出来ていたと考えられる。今後、学習スタイルに合わせた学習行動の提案や、小学校から高校生などの学習段階を考慮した検討を行うことで、個別最適化された学びの実現への一助になることが期待される。