日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育科教育学/ポスター発表

2023年9月1日(金) 14:45 〜 15:45 RY429 (良心館4階RY429番教室)

[11教-ポ-09] 後転倒立の短期的・集団的指導の効果検証

大学生の器械運動授業を対象として

*松長 大祐1、中井 聖1 (1. 大阪電気通信大学)


学校体育における器械運動の学習指導場面では、課題運動の習得に向けて一般化された学習内容が展開されていることが多い。しかし、複数の学習者に対して、そのような指導が施された場合に全体あるいは個別にどのような効果を与えるかは明確になっていない。そこで本研究では、器械運動の課題運動の1つである後転倒立を取り上げ、大学生を対象とした授業の中で、短期的かつ集団的な指導を行った際の学習効果を検証した。
 本研究では、腰の伸ばしと手を押し放すタイミングの練習、幇助による倒立への移行練習の2つを学習内容として採用した。後転倒立が未習熟である大学生47名を被験者とし、学習前後に、先行研究を基に作成した項目に従い、被験者の後転倒立の試技を得点で評価した。学習前後の後転倒立の得点を順位尺度として扱い中央値を求め、学習前と学習後の差をWilcoxonの順位和検定を用いて検定した。
 中央値を基準に被験者を上位群と下位群の2群に分けて検討した場合、学習前の(中央値(四分位範囲))得点は上位群が6(6-7)点、下位群が3.5(2.75-4)点、学習後の得点は上位群が6(5.5-6.5)点、下位群が4(3-5)点であり、両群とも学習前後間に有意差が見られ、上位群では得点が低下したのに対し、下位群では得点が上昇した(それぞれZ=-2.530,p=.011; Z=-3.270,p=.001)。
 得られた結果から、本研究の学習内容は、下位群の者には後転から倒立に移行する際の頭越しの勢いをつけることに働いたが、上位群の者には、勢いの方向を誤るように作用したと推察される。以上のことから、本研究の指導法は、学習前の後転倒立の運動技術の習得段階によって異なる影響を及ぼすことが示唆され、後転倒立の指導においては、学習前の技術の習得段階を確認し、それに応じた適切な学習内容を提供する必要があると考えられた。