日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

ポスター発表(専門領域別)

専門領域別 » 体育科教育学

体育科教育学/ポスター発表

2023年9月1日(金) 14:45 〜 15:45 RY430 (良心館4階RY430番教室)

[11教-ポ-14] ラッシュガードの着用はけのび及びクロール泳のパフォーマンスを低下させる

*豊田 郁豪1、原 英喜2、森山 進一郎2 (1. 東京学芸大学大学院、2. 東京学芸大学)


小学校の水泳授業における上半身を覆うラッシュガードの着用は日焼け対策等として使用されており、現在日本の6割以上の小学校で認められている。水中推進時に生じる抵抗は身体形状に依存するため、ラッシュガードを着用する場合、泳者が水から受ける抵抗は増大するだろう。すなわち、ラッシュガード着用時(R条件)は非着用時(N条件)より泳パフォーマンスの低下が予測される。本研究は、ラッシュガードの着用がけのびとクロール泳のパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。参加者は19〜24歳の大学生13名(男子6名、女子7名)とした。試技は、けのび姿勢を保持したまま専用装置(Torrent社製E-Rack Swim Power Trainer)により約25m牽引されるアシスト牽引けのびと、最大下及び最大努力による25mクロール泳とした。いずれの試技もR及びNの二条件で実施され、アシスト牽引けのびではプール中央以降の7.5m区間の平均泳速度と抵抗係数を、クロール泳では泳者を側面から撮影した映像(60fps)を元に泳速度(V)、ストローク頻度(SR)とストローク長(SL)をそれぞれ算出し、対応のあるt検定を用いて条件間の差を比較した。アシスト牽引けのびでは、R条件がN条件よりもVが有意に低下して抵抗係数が有意に増加した。すなわち、ラッシュガードは上半身を生地で覆うため、前方投影面積が増加して形状抵抗が高まり、けのび姿勢の泳速度が低下したことが示唆された。クロール泳のVも、最大下及び最大ともに、R条件がN条件よりも低下したが、SRとSLに有意な変化は確認されなかった。故に、クロール泳のVの差は、抵抗による影響、もしくはわずかなSRとSLの差による影響、あるいはその両方の影響に起因することが伺えた。結論としてラッシュガードの着用は、けのびとクロールの泳パフォーマンスを低下させると考えられた。