日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育科教育学/ポスター発表

2023年9月1日(金) 14:45 〜 15:45 RY430 (良心館4階RY430番教室)

[11教-ポ-15] 中学・高校の体育授業の経験に見る「主体的・対話的な深い学び」の現状と課題

大学生を対象とした調査から

*中村 恭子1、中村 なおみ2、髙野 美和子3 (1. 順天堂大学、2. 東海大学、3. 日本女子体育大学)


中学・高校の体育は、運動の「主体的・対話的な深い学び」を通して、生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の育成を目標としている。グループ学習やITC活用など様々な手立てが試みられているが、その成果としてどのような経験値を得たかは定かではない。本研究は、大学生が中学・高校の体育授業の経験をどのように認識しているのかを調査・分析し、体育授業の現状と課題について検討資料を得ることを目的とする。
 大学生男女400人余を対象として、中学・高校の体育授業で「楽しかったこと・嬉しかったこと(良い経験)とその理由」、「嫌だったこと・辛かったこと(嫌な経験)とその理由」について自由記述の回答を求め、意味内容で分類して要素を抽出するとともに、それらの経験や認識が示す授業の実態を検討した。
 良い経験は、チーム活動の「協力・一体感」、できなかったことができるようになる「達成感」、全力で動いた「充実感」、褒められた、活躍できたなどの「自己承認の充足」、主体的活動の「満足感」などが多かった。嫌な経験は、上手くできない「挫折感」、疲れる、苦しい運動に対する「不満・嫌悪」、恥ずかしい、笑われる、怒られるなど「他者評価への不安・恐れ」、変化のない「授業展開」、人間関係の悪い「雰囲気」などであった。
 体育の現状として、自分たちで思考・判断して活動する協働学習や、教え合いから運動のコツを理解し、できるようになる良い経験:「主体的・対話的な深い学び」を享受できている授業がある反面、できない挫折感や屈辱感、内容に対する不満などの嫌な経験を与えてしまっている授業があると読み取れた。目標とする技能や評価方法の見直し、種目や学習方法を生徒が主体的に思考・判断・相談する活動形態の重視、互いの良さや違いを認め合い支え合う態度の育成、運動の特性や価値の理解と関わり方を考えさせる指導が課題と考えられる。