第51回日本理学療法学術大会

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日本支援工学理学療法学会

日本支援工学理学療法学会
ICTを活用した遠隔地リハ支援の可能性について

Sat. May 28, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:鈴木英樹(北海道医療大学大学院リハビリテーション科学研究科)

[KS1034-2] ICTを用いた遠隔看護システム(E-KANGO/E-KURASHI)構築の経験から

遠隔地リハビリテーションへの示唆

スーディ神崎和代 (札幌市立大学大学院看護学研究科)

世界保健機構(WHO)が「全ての人に健康を」という目的を達成するのにTelehealthは効果的なツールであると述べてから久しい(1997)。同時期に米国では病院から在宅ケアへの移行過程,フォローアップ,療養者教育,疾病管理などにICTが活用されてきたが,国内では諸事情で遅々としてきた経緯がある。
E-KANGO研究者らは2009年から道内でも冬季生活が特に厳しいオホーツク沿岸地域をフィールドとして,地域保健師・地域住民・訪問看護事業所・地域基幹病院と連携してICTを用いた遠隔看護システムの構築に向けて検証を重ねてきた。先行研究が示すように,人は可能な限り住み慣れたホームや地域でケアを受けたいと願っているが,それを実現するには訪問看護事業所等のサービス提供者の存在は必須条件である。ICTは効果的に,且つ継続的に在宅ケア可能にするには有効なツールであり療養者の数量データを正確に把握だけでなく画像データは療養者の生活状況把握を可能にする。E-KANGOを利用している療養者全員が「大切だ」と述べている機能はスクリーンを通してのコミュニケーション機能であり,これは遠隔地で各住居が点在していて季節によっては外出も儘ならない環境を想像すれば容易に理解できる。
しかし,ICTをケア(看護・介護・理学療法など)に用いる際にはいくつかの注意すべき事項があると考えている。第一に,ICTツールは【人の手】を置換するモノではなく,補完するという基本的な姿勢である。第二に,サービス提供者の便宜のみを優先するのではなく,療養者のQOLを軸にシステム構築を考えることである(研究者らは只管に療養者の声を聴き続けた)。加えて,汎用性を意識して利用者の経済的な負担を軽減するためのシステムに工夫が必要である。
*E-KANGOはICTを用いた遠隔看護システム(2013年特許申請)で,2015年度から連携してきた自治体が中心にシステム運用を開始。E-KURASHIは自主健康管理システム。