第51回日本理学療法学術大会

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日本スポーツ理学療法学会

日本スポーツ理学療法学会
スポーツ外傷・障がいの予防における理学療法の実践例

Sun. May 29, 2016 10:40 AM - 11:40 AM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:坂本雅昭(群馬大学大学院保健学研究科)

[KS1077-2] スポーツ外傷・障がいの予防における理学療法の実践例

永吉由香 (筑紫女学園高等学校バスケットボール部)

数年前の報告では,スポーツ外傷・障がいを起こした者に対し,復帰につなげるためにどうアプローチするかが多く取り上げられている。しかし近年,外傷・障がいを,いかに予防するかに移行し,現在では予防に関する報告が治療に対する報告を上回るかもしれない。筆者自身,2000年より高校の女子バスケットボール部に帯同し,理学療法士としての医療現場はもとより,トレーナーとしても外傷・障がいの予防の重要性を強く感じている。
そこで,所属する医療機関では2008年より種目に応じたアスレティック・リハビリテーションを強化し,競技復帰に際してはスポーツ動作の側面から復帰基準となるテスト項目を定めた。また,実際のスポーツ現場ではチームに対する前十字靭帯(ACL)損傷予防トレーニングを導入した。さらに,福岡県バスケットボール協会等に働きかけ,高校のクラブ顧問やコーチに対し指導者講習を実施した。それに加え,定期的に中学・高校のクラブ活動の現場に出向きACL損傷予防教室の開催,バスケットボール大会でのトレーナーズルームの設営等を施行してきた。
このなかでACL損傷患者に対して行ってきた調査では,非接触による損傷はプレイ時間の前半1/5と後半1/5に多く発生していた。ACL損傷者では「ACL損傷を知っていた」選手は33%,「予防トレーニングを施行していた」選手は11%であった。バスケットボールを指導するクラブ顧問に対して行った調査では,75%がACL損傷を一番怖いと感じているにもかかわらず予防トレーニングを導入しているクラブは1%以下であった。導入しない理由については,「どのようなものか分からない」「時間が取れない」「予防できると思わない」等であり,現場の指導者は予防トレーニングでACL損傷の発生率を下げることができるという認識に乏しいという現実がわかった。
本学術集会では,このような現状と予防を含め理学療法士が何をしなければならないかを提言したい。