第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)04

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:松本泉(熊本駅前看護リハビリテーション学院 理学療法学科)

[O-ED-04-5] 臨床実習前後での社会経験学生と社会経験のない学生における社会人基礎力の比較検討

鈴木裕治, 村上賢治, 長住達樹, 大和田宏美 (仙台青葉学院短期大学)

Keywords:社会人基礎力, 臨床実習, 社会経験学生

【はじめに,目的】

経済産業省が定義する「社会人基礎力」の育成には一般企業においてインターンシップが活用されている。理学療法分野における社会人基礎力の育成にも,先行研究において臨床実習の有用性が報告されている。本学夜間主コースでは,一般企業での就労など社会経験がある学生(以下,社会経験学生)を多く受け入れている。

本研究の目的は,本学夜間主コースの社会経験学生と社会経験のない学生において,臨床実習を通して社会人基礎力にどのような影響が生じるのかを比較検討することである。

【方法】

対象は,本学理学療法学専攻夜間主コース学生41名(年齢28.4±5.8歳)で,社会経験学生30名(年齢30.5±5.1歳),社会経験のない学生11名(年齢22.1±1.5歳)である。

方法は,「社会人基礎力自己分析シート」を用い,臨床実習(7週間)の前後で能力項目別に5段階にて自己評価を実施した。「社会人基礎力自己分析シート」の項目は,1.前に踏み出す力(①主体性,②働きかけ力,③実行力),2.考え抜く力(④課題発見力,⑤計画力,⑥想像力),3.チームで働く力(⑦発信力,⑧傾聴力,⑨柔軟力,⑩状況把握力,⑪規律性,⑫ストレスコントロール力)の3分類12能力要素からなる。社会人基礎力の能力要素の意味については,岐阜大学医学部看護学科を参考に,長住が理学療法士編に改変したものである。統計学的解析は,EZR versioin 1.30を用いて,Wilcoxonの符号付順位和検定およびMann-WhitneyのU検定を行い有意水準は5%とした。

【結果】

臨床実習前後では,社会経験学生群,社会経験がない学生群ともに合計点および3分類において有意差が認められた(p>0.01)。両群間では,実習前において④課題発見力で社会経験学生が有意に高かったが(p>0.05),実習後では有意差は認められなかった。

【結論】

本研究において,臨床実習は社会人基礎力を向上させることが示唆された。臨床実習は理学療法士の実践的知識・技術の習得だけでなく,社会人として必要な資質の向上に有用である。

一般企業が求める社会人基礎力は,特に①主体性,③実行力,④課題発見力が高い。社会経験学生は就労などにより既に向上する機会を得ていたと推察される。臨床実習を通して理学療法臨床思考過程を経験することで,特に問題解決に必要となる④課題発見力の成長が促され,社会経験のない学生との有意差がなくなったと考えられる。

今後は,理学療法士に必要となる社会人基礎力を把握し,求められる人材像に少しでも近づけられるよう臨床実習施設等と連携を図り,理学療法教育における情意領域の向上の一助としていきたい。