[O-MT-22-5] 慢性腰痛患者における痛みと満足度を媒介する因子の検討
キーワード:慢性腰痛, 満足度, 能力障害
【はじめに,目的】
近年,慢性疼痛患者の評価においては,疼痛強度のみでなく,能力障害や心理的要因,QOLなど多面的に評価することが推奨されている。なかでも,痛みは生活満足度の低下と関連することが報告されており,我々は生活満足度を評価する質問票である日本語版Lisat-11を作成した。しかし,痛みが生活満足度に直接関与するのか,ほかの要因を介して関与するのかは明らかになっていない。本研究の目的は,慢性腰痛患者において,能力障害及び心理的要因が痛みと生活満足度の関係を媒介するか検討することである。
【方法】
痛みが3ヶ月以上持続している非特異的腰痛患者102名(男性33名,女性69名,平均年齢57.0±16.0歳)を対象とし,疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),能力障害(Roland-Morris Disability Questionnaire;RDQ),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)及び生活満足度(The Life satisfaction checklist;Lisat-11)を評価した。SPSS(PROCESSマクロ)を用いて,独立変数をVAS,従属変数をLisat-11の平均値,媒介変数をRDQ,PCS,TSK,HADS不安・抑うつ,共変数を年齢,性別とした媒介分析を行った。
【結果】
各評価項目の平均値はVAS 49.9±25.0,RDQ 5.9±4.6,PCS 21.1±9.8,TSK 38.8±5.3,HADS不安5.9±3.6,HADS抑うつ5.5±2.9,Lisat-11 4.0±0.7であった。媒介分析の結果,疼痛強度と生活満足度に総合効果(Total Effect=0.006,p=0.03)は認められたが,直接効果(Direct Effect=0.001,p=0.68)は認められなかった。また,媒介変数のうちTSK(Indirect Effect=0.0023,95%CI=0.0057-0.005)において媒介効果が認められた。
【結論】
疼痛強度と生活満足度に総合効果が認められたものの,直接効果は認められず,TSKに媒介効果が認められたことは,完全媒介モデルを示している。つまり,痛みは見かけ上は生活満足度に関与しているが,実際には運動恐怖が生活満足度に強く影響することが示唆された。また,痛みは能力障害を介在して生活満足度に影響していなかった。これらのことより,慢性腰痛患者の理学療法において生活満足度を改善するためには,能力障害や破局的思考よりも,運動恐怖の改善を目標とした治療戦略を立案する必要性が示唆された。
近年,慢性疼痛患者の評価においては,疼痛強度のみでなく,能力障害や心理的要因,QOLなど多面的に評価することが推奨されている。なかでも,痛みは生活満足度の低下と関連することが報告されており,我々は生活満足度を評価する質問票である日本語版Lisat-11を作成した。しかし,痛みが生活満足度に直接関与するのか,ほかの要因を介して関与するのかは明らかになっていない。本研究の目的は,慢性腰痛患者において,能力障害及び心理的要因が痛みと生活満足度の関係を媒介するか検討することである。
【方法】
痛みが3ヶ月以上持続している非特異的腰痛患者102名(男性33名,女性69名,平均年齢57.0±16.0歳)を対象とし,疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),能力障害(Roland-Morris Disability Questionnaire;RDQ),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)及び生活満足度(The Life satisfaction checklist;Lisat-11)を評価した。SPSS(PROCESSマクロ)を用いて,独立変数をVAS,従属変数をLisat-11の平均値,媒介変数をRDQ,PCS,TSK,HADS不安・抑うつ,共変数を年齢,性別とした媒介分析を行った。
【結果】
各評価項目の平均値はVAS 49.9±25.0,RDQ 5.9±4.6,PCS 21.1±9.8,TSK 38.8±5.3,HADS不安5.9±3.6,HADS抑うつ5.5±2.9,Lisat-11 4.0±0.7であった。媒介分析の結果,疼痛強度と生活満足度に総合効果(Total Effect=0.006,p=0.03)は認められたが,直接効果(Direct Effect=0.001,p=0.68)は認められなかった。また,媒介変数のうちTSK(Indirect Effect=0.0023,95%CI=0.0057-0.005)において媒介効果が認められた。
【結論】
疼痛強度と生活満足度に総合効果が認められたものの,直接効果は認められず,TSKに媒介効果が認められたことは,完全媒介モデルを示している。つまり,痛みは見かけ上は生活満足度に関与しているが,実際には運動恐怖が生活満足度に強く影響することが示唆された。また,痛みは能力障害を介在して生活満足度に影響していなかった。これらのことより,慢性腰痛患者の理学療法において生活満足度を改善するためには,能力障害や破局的思考よりも,運動恐怖の改善を目標とした治療戦略を立案する必要性が示唆された。