[O-NV-11-5] 慢性期脳卒中患者における麻痺側・非麻痺側下肢の筋量・筋内脂肪量と歩行自立度の関係
キーワード:慢性期脳卒中患者, 筋量, 筋内脂肪量
【はじめに,目的】
歩行が自立している慢性期脳卒中患者では,麻痺側下肢の筋量は非麻痺側より少なく,筋内脂肪量は非麻痺側よりも多いことがわかっている(Ryan, et al., 2002)。また,筋力トレーニングによりそれら筋量は増大し,筋内脂肪量は減少することが報告されている(Ryan, et al., 2011)。一方,臨床では,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対して,歩行自立度の改善に向けた介入がなされることが多い。歩行が自立している者と比較し,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の下肢の筋量は少なく,筋内脂肪量は多いことが予想される。しかし,それら患者における筋量と筋内脂肪量の差異については明らかではない。これらを明らかにすることは,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対する介入方法を模索する上で有益な知見を付加することになると考える。本研究の目的は,慢性期脳卒中患者における麻痺側・非麻痺側下肢の筋量・筋内脂肪量と歩行自立度の関係を調査することである。
【方法】
対象は,発症6カ月以上経過した慢性期脳卒中患者33名であった。評価項目は,両下肢の大腿四頭筋の筋量・筋内脂肪量,麻痺側下肢機能,歩行自立度とした。筋量と筋内脂肪量は,超音波画像診断装置(SonoSite社)を用いて一定のゲインのもと撮影された横断面画像の筋厚と筋輝度から評価した。筋厚と筋輝度の計測には,Image J softwareを用いた。筋厚は大腿直筋と中間広筋の筋厚の合算値とし,筋輝度は8 bit gray-scaleを用いて数値化された大腿直筋の輝度とした。筋輝度は筋内脂肪量が多いと高値となり,少ないと低値を示すことで評価される(Pillen, et al., 2006)。麻痺側下肢機能はFugl-Meyer Assessmentの下肢スコア(FMA下肢スコア)を用いて評価した。歩行自立度はFunctional independence measureの歩行スコアを用いて評価し,それらスコアで6,7点に該当する者を自立群,1-5点に該当する者を非自立群とした。非自立群と自立群の麻痺側筋厚と筋輝度の比較には,FMA下肢スコアを共変量とした共分散分析を実施し,主効果を認めた場合は,事後検定としてBonferroni法を行った。両群の非麻痺筋厚・筋輝度,年齢,身長,体重の比較には対応のないt検定を実施した。
【結果】
非自立群は22名,自立群は11名であった。麻痺側筋厚を従属変数とした共分散分析の結果,主効果を認め,非自立群の筋厚は自立群より有意に低値を示した。麻痺側筋輝度を従属変数とした共分散分析では主効果は認めなかった。両群の非麻痺側筋厚・筋輝度および年齢,身長,体重に差は認めなかった。
【結論】
麻痺側の筋量は中枢性運動麻痺の程度を考慮しても,歩行自立に独自の影響を及ぼしている可能性があることがわかった。歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の歩行自立度の改善や,歩行が自立している者の自立度維持のためには,麻痺側下肢の筋量の増大を図る必要があるのかもしれない。
歩行が自立している慢性期脳卒中患者では,麻痺側下肢の筋量は非麻痺側より少なく,筋内脂肪量は非麻痺側よりも多いことがわかっている(Ryan, et al., 2002)。また,筋力トレーニングによりそれら筋量は増大し,筋内脂肪量は減少することが報告されている(Ryan, et al., 2011)。一方,臨床では,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対して,歩行自立度の改善に向けた介入がなされることが多い。歩行が自立している者と比較し,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の下肢の筋量は少なく,筋内脂肪量は多いことが予想される。しかし,それら患者における筋量と筋内脂肪量の差異については明らかではない。これらを明らかにすることは,歩行が自立していない慢性期脳卒中患者に対する介入方法を模索する上で有益な知見を付加することになると考える。本研究の目的は,慢性期脳卒中患者における麻痺側・非麻痺側下肢の筋量・筋内脂肪量と歩行自立度の関係を調査することである。
【方法】
対象は,発症6カ月以上経過した慢性期脳卒中患者33名であった。評価項目は,両下肢の大腿四頭筋の筋量・筋内脂肪量,麻痺側下肢機能,歩行自立度とした。筋量と筋内脂肪量は,超音波画像診断装置(SonoSite社)を用いて一定のゲインのもと撮影された横断面画像の筋厚と筋輝度から評価した。筋厚と筋輝度の計測には,Image J softwareを用いた。筋厚は大腿直筋と中間広筋の筋厚の合算値とし,筋輝度は8 bit gray-scaleを用いて数値化された大腿直筋の輝度とした。筋輝度は筋内脂肪量が多いと高値となり,少ないと低値を示すことで評価される(Pillen, et al., 2006)。麻痺側下肢機能はFugl-Meyer Assessmentの下肢スコア(FMA下肢スコア)を用いて評価した。歩行自立度はFunctional independence measureの歩行スコアを用いて評価し,それらスコアで6,7点に該当する者を自立群,1-5点に該当する者を非自立群とした。非自立群と自立群の麻痺側筋厚と筋輝度の比較には,FMA下肢スコアを共変量とした共分散分析を実施し,主効果を認めた場合は,事後検定としてBonferroni法を行った。両群の非麻痺筋厚・筋輝度,年齢,身長,体重の比較には対応のないt検定を実施した。
【結果】
非自立群は22名,自立群は11名であった。麻痺側筋厚を従属変数とした共分散分析の結果,主効果を認め,非自立群の筋厚は自立群より有意に低値を示した。麻痺側筋輝度を従属変数とした共分散分析では主効果は認めなかった。両群の非麻痺側筋厚・筋輝度および年齢,身長,体重に差は認めなかった。
【結論】
麻痺側の筋量は中枢性運動麻痺の程度を考慮しても,歩行自立に独自の影響を及ぼしている可能性があることがわかった。歩行が自立していない慢性期脳卒中患者の歩行自立度の改善や,歩行が自立している者の自立度維持のためには,麻痺側下肢の筋量の増大を図る必要があるのかもしれない。