第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P01

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-ED-01-2] 国家試験対策における統計学的目標管理について

大寺健一郎 (宮崎リハビリテーション学院)

キーワード:国家試験対策, 統計的数値指標, 学習管理指導

【はじめに,目的】

当学院では,国家試験対策における過去の実績から,模擬試験の時系列の結果を基にした目標設定に注目し,具体的な統計学的数値目標の提示と,具体的な学習管理指導を実施してきた。

この指導方法が学生全体の士気を高め,また学生自身の学力把握と,詳細な学習対策の立案に寄与するものであるという仮説を基に実際の経緯を検証し,一定の知見を得たのでここに報告する。

【方法】

対象は当学院の平成23年度から26年度までの最終学年の学生とした。

まず模擬試験調査として,平成23・24年度の模擬試験の学校平均(M)と学校標準偏差(S)それぞれを回帰分析し,その回帰係数の関連を分析した。

次に平成25・26年度では,模擬試験調査の回数を増やし,学生にMとSおよび次回模擬試験の具体的なミニマムの統計学的数値目標を示した。目標はMを基準にし,MからSを引いた点数をボーダーライン(BL)として,BL以下の学生はBL以上を,平均点以下からBL以上の学生はMを,M以上の学生は168点以上を目標とした。また自分の成績に足りなかった点数分を,点数が取れなかった教科で底上げし,次回の試験の点数を目標に近づける学習方法を指導した。

以上の学習管理指導の結果を確認するために,国家試験の自己採点のMとSおよび合格率がどのように変化したかを検証し,今後の対策を検討した。

【結果】

①平成23年度と②24年度は5回の模擬試験調査を実施した。Mの回帰係数(決定係数)は①10.54(0.43)②11.37(0.78),Sは①0.85(0.35)②0.52(0.28)であった。③平成25年度は9回,④平成26年度は10回の模擬試験調査を実施し,Mの回帰係数(決定係数)は③6.38(0.74)④5.80(0.79),Sは③-0.41(0.26)④-0.71(0.52)であった。

国家試験の自己採点によるM(S)の結果は,①189.8(19.5)②188.7(24.4)③196.2(16.7)④190.7(18.3)で,国家試験合格率は①86.4%②82.4%③96.7④93.0%であった。

【結論】

①②については,MとS共に回帰係数は正になっていた。これは,学生個人間の成績にバラツキがあるためで,目標設定が各自に任されていたことが推察された。

そこで②③では,Mを高く,Sを小さくするように,具体的な統計学的数値目標を設定し学生に提示した。これにより学校全体の成績が上昇していくイメージを共有でき,学生は弱点である教科の学習を進めていくことで,全体の目標値を目指す意識が働いたと考えられる。その結果③④の回帰係数は,Mが正のまま,Sが負に転換したと考えられる。最終的に国家試験の自己採点のMおよび合格率は①②に比較して③④は向上し,Sは小さくなった。

今後はこの学習管理指導の方法をより具体化し,学生全体の国家試験対策に対する士気を高めるとともに,学生個人の管理に拡張し,合格率の向上に寄与したいと考えている。