第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P10

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-ED-10-4] 女性療法士の妊娠期から育児期における労務管理の調査報告

藤原愛作1, 山川亜沙美1, 小野秀幸1, 山野薫2 (1.佐藤第一病院, 2.宝塚医療大学)

キーワード:妊娠, 管理体制, 教育

【はじめに】

これまで理学療法士(以下PT)の職場における妊娠や出産に関わる就労環境に関する研究は,各都道府県の理学療法士会からの報告が散見される。平成22年度の(公社)日本理学療法士協会の調査では,女性PTの妊娠・出産期のトラブルは通常より多いと報告している。国は,妊娠から育児までの職場における環境整備を求める法律として次世代育成支援対策推進法(平成15年7月16日法律第120号)を整備した。本研究は次世代育成支援対策推進法に基づく“子育てサポート企業”の認定を受けた施設に対して,妊娠期~育児期におけるリハビリテーション部門に勤務する女性療法士(以下女性療法士)の労務管理について調査を行ったので,考察を加えて報告する。

【方法】

対象は子育てサポート企業の認定施設の中でリハビリテーション科を標榜している九州圏域の24施設とした。方法は郵送による質問紙法(無記名)とし,回答者はリハビリテーション部門の責任者とした。調査項目は施設の基本情報,妊娠中のトラブル,妊娠に関する教育体制,出産後の勤務形態,施設の支援制度,および自由記載欄とした。

【結果】

返送された調査票は15通(回収率62.5%)であり,設立母体の内訳は医療法人:11件(73.3%),社会医療法人:4施設(26.6%)であった。職種別の妊娠期のトラブルはPT:7施設(46.6%),作業療法士:8施設(53.3%),言語聴覚士:1施設(6.7%)であった。トラブルの内訳は,流産:6件,悪阻:6件,切迫流産:5件,切迫早産:5件,妊娠中毒症:3件などであった。未妊娠者へ妊娠期の教育を行っている施設は0施設であったが,妊娠者へは2施設(13.3%)が実施していた。出産後の女性療法士の勤務形態は,常勤:11件,時間制限の常勤:10件,パートタイム:3件,その他:1件であった。各施設の支援制度は産前・育児休暇,育児休憩時間,育児期短時間勤務,子供の看護休暇,病後児保育料支援制度,母性健康管理のための休暇などがあった。産前・育児休暇中の欠員の補充について自由記載にて回答があった。

【結論】

本研究から女性療法士の妊娠期から育児期の就労管理の特徴は下記の2点であった。第一は女性療法士の妊娠期のトラブルが約半数の施設で起きていることが明らかになった。内容は流産,悪阻,切迫流産,切迫早産など多岐に渡り,いずれも母体と就労に大きな影響を及ぼすものばかりであった。トラブルに伴う欠勤や病気休暇の支援体制はなく,管理体制の不備が指摘できる。第二は妊娠に関する教育が少ない点である。妊娠期の身体の変化や業務時の注意点などを学ぶ機会を設定することは,本人はもとより周囲に好影響を与えると考えられる。加えて,対象が子育てサポート企業の認定施設であることから,取り組みの企画を増やしやすく,症状悪化を回避するために重要である。本研究は,女性療法士が生涯に渡り安心して就労できる職場構築の足がかりとなる。