[P-MT-20-4] 再発性腰痛,慢性腰痛者と健常者における心理的要因と胸郭拡張差,2点識別覚の比較
Keywords:慢性腰痛, 再発性腰痛, 要因
【目的】
日本の有訴受診率上位に腰痛症があり,慢性化による医療費高騰が危惧されている。慢性化の予防が理学療法では課題であるが,一般的な理学療法評価や治療概念では十分ではなく,心理的要因が大きく関与している。また近年,慢性疼痛では一次感覚受容野の可塑的変化に2点識別覚が評価として有用であるといわれ,腰部機能障害を有する患者では肋骨の拡張が制限されることが明らかになってきた。そこで本研究では,腰痛と関連がある要因を明らかにするため,心理的要因に加えて,神経の可塑的変化を反映する2点識別覚,腰部機能障害を反映する胸郭拡張差を健常群と腰痛群で横断的に比較検討した。
【方法】
対象は病院勤務の20歳以上55歳以下で腰痛が3ヵ月以上持続する男性13名,女性14名の27名(平均年齢30.1±9.2)を慢性腰痛群,定期的に腰痛を繰り返す男性11名,女性10名の21名(平均年齢29±7)を再発群,腰痛が回復した男性5名,女性2名の7名(平均年齢31.9±8.3)を回復群,腰痛のない男性17名,女性22名の39名(平均年齢27.1±5.3)を健常群とした。対象者の除外基準は脊椎外科的手術の既往,神経根症状を有する者,腰部の著明な変形がある者とした。評価項目は疼痛強度,心理的要因,胸郭拡張差,2点識別覚とした。疼痛強度はNumeric Rating Scale(NRS)にて評価し,心理的要因は破局的思考質問紙法Pain Catastrophizing Scale(PCS)を用いた。胸郭拡張差の測定は膝立背臥位,剣状突起部と第10肋骨部で最大吸気と呼気をテープメジャーにて3回計測し平均値を算出した。2点識別覚の測定は腹臥位,測定部位は腰痛群では疼痛側の疼痛部位と同レベルの反対側を測定し,対照群ではL4/L5レベルの両側を測定した。方法はノギスを脊柱に対して垂直,疼痛部位の中心に当て,対照群では脊柱起立筋群にて測定した。統計は各群間での測定項目の比較を1元配置分散分析後に多重比較検定を行った。また,疼痛と相関がある項目を検討する為に,NRSを従属変数として重回帰分析を行った。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
各群間において胸郭拡張差,2点識別覚は有意な差はなく,PCSでは健常群と再発群,健常群と慢性腰痛群,回復群と慢性腰痛群に有意な差を認めた(p<0.05)。また,痛みに対してPCSが相関係数0.542となり有意な正の関係が認められた(p<0.05)。
【結論】
今回の対象者は疼痛が自制内で仕事を継続しており,疼痛強度も低くいために局所的な理学療法評価では健常者,回復した者,再発者,慢性腰痛者間に有意な差を認めかったと考えられる。現在,慢性腰痛は恐怖回避信念モデルを用いて説明されており,本研究は悲観的な解釈や不安などの要因が大きく関与するという結果を支持した。このことから臨床においては,再発を繰り返す者や慢性腰痛者両群とも心理的要因を評価し考慮したうえで,各種理学療法評価の実施をすることが重要であると考えられる。
日本の有訴受診率上位に腰痛症があり,慢性化による医療費高騰が危惧されている。慢性化の予防が理学療法では課題であるが,一般的な理学療法評価や治療概念では十分ではなく,心理的要因が大きく関与している。また近年,慢性疼痛では一次感覚受容野の可塑的変化に2点識別覚が評価として有用であるといわれ,腰部機能障害を有する患者では肋骨の拡張が制限されることが明らかになってきた。そこで本研究では,腰痛と関連がある要因を明らかにするため,心理的要因に加えて,神経の可塑的変化を反映する2点識別覚,腰部機能障害を反映する胸郭拡張差を健常群と腰痛群で横断的に比較検討した。
【方法】
対象は病院勤務の20歳以上55歳以下で腰痛が3ヵ月以上持続する男性13名,女性14名の27名(平均年齢30.1±9.2)を慢性腰痛群,定期的に腰痛を繰り返す男性11名,女性10名の21名(平均年齢29±7)を再発群,腰痛が回復した男性5名,女性2名の7名(平均年齢31.9±8.3)を回復群,腰痛のない男性17名,女性22名の39名(平均年齢27.1±5.3)を健常群とした。対象者の除外基準は脊椎外科的手術の既往,神経根症状を有する者,腰部の著明な変形がある者とした。評価項目は疼痛強度,心理的要因,胸郭拡張差,2点識別覚とした。疼痛強度はNumeric Rating Scale(NRS)にて評価し,心理的要因は破局的思考質問紙法Pain Catastrophizing Scale(PCS)を用いた。胸郭拡張差の測定は膝立背臥位,剣状突起部と第10肋骨部で最大吸気と呼気をテープメジャーにて3回計測し平均値を算出した。2点識別覚の測定は腹臥位,測定部位は腰痛群では疼痛側の疼痛部位と同レベルの反対側を測定し,対照群ではL4/L5レベルの両側を測定した。方法はノギスを脊柱に対して垂直,疼痛部位の中心に当て,対照群では脊柱起立筋群にて測定した。統計は各群間での測定項目の比較を1元配置分散分析後に多重比較検定を行った。また,疼痛と相関がある項目を検討する為に,NRSを従属変数として重回帰分析を行った。なお有意水準は5%未満とした。
【結果】
各群間において胸郭拡張差,2点識別覚は有意な差はなく,PCSでは健常群と再発群,健常群と慢性腰痛群,回復群と慢性腰痛群に有意な差を認めた(p<0.05)。また,痛みに対してPCSが相関係数0.542となり有意な正の関係が認められた(p<0.05)。
【結論】
今回の対象者は疼痛が自制内で仕事を継続しており,疼痛強度も低くいために局所的な理学療法評価では健常者,回復した者,再発者,慢性腰痛者間に有意な差を認めかったと考えられる。現在,慢性腰痛は恐怖回避信念モデルを用いて説明されており,本研究は悲観的な解釈や不安などの要因が大きく関与するという結果を支持した。このことから臨床においては,再発を繰り返す者や慢性腰痛者両群とも心理的要因を評価し考慮したうえで,各種理学療法評価の実施をすることが重要であると考えられる。