[P-MT-24-3] 上肢運動速度トレーニングが虚弱高齢者の歩行機能に与える影響
Keywords:運動速度, 歩行機能, 虚弱高齢者
【はじめに,目的】
高齢者の歩行機能にとって,筋パワーは筋力以上に重要な要因であることが明らかにされており,近年,筋パワーの一要因である運動速度の重要性が示されている。
先行研究において,下肢運動速度が歩行機能と関連すること,さらに,下肢運動速度トレーニングを実施することによって,下肢運動速度が向上し,歩行機能が改善することが示されている。
一方,上肢については,下肢と同様に,運動速度と歩行機能の有意な相関が明らかにされているが,上肢運動速度トレーニングが歩行機能に与える影響については明らかにされていない。そこで本研究の目的を,上肢運動速度トレーニングによって,歩行機能の改善が得られるかについて検証することとした。
【方法】
対象は介護老人保健施設に入所しており,歩行が自立している高齢女性22名(年齢86.6±5.4歳)とした。介入は,上肢運動速度トレーニングを約20分間,週に3回,10週間実施した。測定項目は,歩行速度,TUG,上肢運動速度,膝伸展筋力とした。歩行速度とTUGは,経時的な変化を評価するため,介入前,介入開始4週および8週,介入終了時(10週)の合計4回,上肢運動速度と膝伸展筋力は,介入の効果を評価するため,介入前と8週の合計2回実施した。歩行速度は通常速度で,TUGはPodsiadloらの原文に基づき実施した。上肢運動速度は,先行研究に従い,机上のプラスチックケースを30cm側方へ移動させる時間を測定した。膝伸展筋力は90°屈曲位で,等尺性筋力を測定した。統計は,歩行速度とTUGは反復測定一元配置分散分析と多重比較法(Bonferroni)を,上肢運動速度と膝関節伸展筋力は,対応のあるt検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
各測定項目の平均を介入前,4週,8週,10週の順に示す。歩行速度(m/sec)は,0.74±0.17,0.75±0.15,0.79±0.18,0.87±0.18,TUG(秒)は,19.3±7.0,19.8±7.7,17.7±6.6,15.4±5.4であった。歩行速度,TUGは介入前と10週,4週と10週の間に有意な改善が認められた(p<0.05)。上肢運動速度(秒)は,0.14±0.03,0.12±0.02と有意に向上した(p<0.05)。膝伸展筋力に有意な差は認められなかった。
【結論】
上肢運動速度トレーニングによって,上肢運動速度が向上し,さらに歩行速度,TUGに有意な改善が認められた。
Hermanらは,上下肢の筋パワーの関連性が筋力以上に強いことを示しており,その関連性は,筋力のみでなく運動速度によること,さらに,そのメカニズムは末梢性ではなく中枢神経的なものであると考察している。本研究では,上肢運動速度トレーニングによって,中枢神経系の機能が改善され,歩行機能の向上に貢献した可能性が考えられる。
上肢運動速度トレーニングは座位で安全に実施可能な介入方法であることから非常に有益なトレーニングであるが,今回はコントロール群の設定が困難であったことから,今後さらなる検討が必要である。
高齢者の歩行機能にとって,筋パワーは筋力以上に重要な要因であることが明らかにされており,近年,筋パワーの一要因である運動速度の重要性が示されている。
先行研究において,下肢運動速度が歩行機能と関連すること,さらに,下肢運動速度トレーニングを実施することによって,下肢運動速度が向上し,歩行機能が改善することが示されている。
一方,上肢については,下肢と同様に,運動速度と歩行機能の有意な相関が明らかにされているが,上肢運動速度トレーニングが歩行機能に与える影響については明らかにされていない。そこで本研究の目的を,上肢運動速度トレーニングによって,歩行機能の改善が得られるかについて検証することとした。
【方法】
対象は介護老人保健施設に入所しており,歩行が自立している高齢女性22名(年齢86.6±5.4歳)とした。介入は,上肢運動速度トレーニングを約20分間,週に3回,10週間実施した。測定項目は,歩行速度,TUG,上肢運動速度,膝伸展筋力とした。歩行速度とTUGは,経時的な変化を評価するため,介入前,介入開始4週および8週,介入終了時(10週)の合計4回,上肢運動速度と膝伸展筋力は,介入の効果を評価するため,介入前と8週の合計2回実施した。歩行速度は通常速度で,TUGはPodsiadloらの原文に基づき実施した。上肢運動速度は,先行研究に従い,机上のプラスチックケースを30cm側方へ移動させる時間を測定した。膝伸展筋力は90°屈曲位で,等尺性筋力を測定した。統計は,歩行速度とTUGは反復測定一元配置分散分析と多重比較法(Bonferroni)を,上肢運動速度と膝関節伸展筋力は,対応のあるt検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
各測定項目の平均を介入前,4週,8週,10週の順に示す。歩行速度(m/sec)は,0.74±0.17,0.75±0.15,0.79±0.18,0.87±0.18,TUG(秒)は,19.3±7.0,19.8±7.7,17.7±6.6,15.4±5.4であった。歩行速度,TUGは介入前と10週,4週と10週の間に有意な改善が認められた(p<0.05)。上肢運動速度(秒)は,0.14±0.03,0.12±0.02と有意に向上した(p<0.05)。膝伸展筋力に有意な差は認められなかった。
【結論】
上肢運動速度トレーニングによって,上肢運動速度が向上し,さらに歩行速度,TUGに有意な改善が認められた。
Hermanらは,上下肢の筋パワーの関連性が筋力以上に強いことを示しており,その関連性は,筋力のみでなく運動速度によること,さらに,そのメカニズムは末梢性ではなく中枢神経的なものであると考察している。本研究では,上肢運動速度トレーニングによって,中枢神経系の機能が改善され,歩行機能の向上に貢献した可能性が考えられる。
上肢運動速度トレーニングは座位で安全に実施可能な介入方法であることから非常に有益なトレーニングであるが,今回はコントロール群の設定が困難であったことから,今後さらなる検討が必要である。