第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P26

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-26-5] 人工膝関節置換術後の身体活動量に影響を及ぼす関連因子の検討

中村睦美, 木勢千代子, 山形沙穂, 長谷川恭一, 佃麻人 (赤羽中央総合病院リハビリテーション科)

Keywords:人工膝関節置換術, 身体活動量, 関連因子

【はじめに】

変形性膝関節症が高度に進行し身体活動量が低下した者は,人工膝関節置換術の施行により,身体活動量の増大が期待される。しかし,術後の身体活動量は,術前と比較して増大するものの同年代の健常者より低いと報告されている(Lützner,2014)。身体活動量には疼痛や膝関節機能だけでなく健康関連QOL(HRQOL)などの要因が影響していると考えられるが,身体活動量に影響を及ぼす関連因子についての報告は少ない。本研究では,人工膝関節置換術後の身体活動量に影響を及ぼす関連因子を明らかにすることを目的とした。



【方法】

対象者は人工膝関節置換術を施行した129名(75.1±7.8歳,男性23名,女性106名)とした。取り込み基準は,両側と片側施行,人工膝関節全置換術(TKA)と単顆置換術(UKA)を問わず,除外基準は自立歩行が困難な者,重度の認知機能低下および神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者とした。内訳は,TKA107名,UKA22名,片側73名,両側56名であった。評価項目は,BMI,身体活動量,膝関節痛,膝関節機能,膝伸展筋力体重比(Nm/kg),HRQOLとした。身体活動量の指標には国際標準化身体活動質問票(IPAQ)Short Version日本語版を用い,週当たりの身体活動量(MET-minutes/週)を算出した。HRQOLの評価には,MOS Short Form 8 Item Health Survey(SF8)の下位尺度スコアを用いた。膝関節痛と膝関節機能の評価には,日本語版膝機能評価法(準WOMAC)の下位尺度を用いた。評価は,術後6か月に行った。統計解析には,単変量解析としてPearsonの相関係数を用い身体活動量と他の項目の関係を検討した。次に多変量解析として身体活動量を従属変数とし,その他の項目を独立変数に投入したステップワイズ法による重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。



【結果】

単変量解析の結果,身体活動量と有意な相関を示したのはBMI(r=-0.192),筋力(r=0.251),SF8の下位尺度である全体的健康観(r=0.272),活力(r=0.201)であった。また,身体活動量を従属変数とした重回帰分析では,全体的健康観,筋力,膝関節痛,膝関節機能が有意な関連要因として抽出された。重回帰係数は0.471であり自由度調整済み決定係数は0.196であった。



【結論】

本研究の結果より人工膝関節置換術後の身体活動量には,HRQOLの全体的健康感や,筋力,膝関節痛,膝関節機能が関与していることが明らかとなった。Grootら(2008)は,術後の疼痛や膝関節機能は経時的に改善するが,身体活動量の改善は遅延すると報告しているが,これは,本研究で示した身体活動量には筋力や膝関節痛,膝関節機能などの身体機能だけでなく,全体的健康感などの精神的な側面も関与している事からも説明ができる。本研究により,臨床において術後の身体活動量を増大させるためには,機能障害の改善だけでなく全体的健康感を高めるような働きかけや精神的なケアやサポートも必要であることが示された。