第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P06

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-TK-06-2] 大腿骨近位部骨折患者の骨折前の外出状況と機能回復の関連

安岡実佳子1,2, 樋口由美1, 藤堂恵美子1, 北川智美1, 今岡真和1, 上田哲也1, 安藤卓1, 水野稔基1, 高尾耕平1, 大垣昌之2, 長岡正子2 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.社会医療法人愛仁会愛仁会リハビリテーション病院)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 機能回復, 外出

【はじめに,目的】

高齢者の大腿骨近位部骨折は,身体活動低下や閉じこもりから生活機能低下を引き起こす。骨折後の機能回復には骨折前の生活や能力が関係するが,家庭内の役割や屋外での活動は性差により異なる。そこで,本研究では骨折前の外出状況と骨折後の機能回復の関連を男女別に検討した。

【方法】

回復期リハビリテーション病院に入院する65歳以上の初発の大腿骨近位部骨折患者を対象とした。入院時に年齢,身長,体重,長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を測定し,骨折前4週間の生活に関して,Barthel Index(BI),Life-space assessment(LSA),1週間の定期的な外出状況を患者から聞き取った。外出状況は,外出目的とそれに対する外出先,外出頻度を調査し,1週間あたりの外出件数と外出頻度を算出した。また,外出目的別の外出件数と外出頻度も算出した。術後1ヶ月時点と退院時に等尺性膝伸展筋力,10m歩行,5回立ち座りを測定した。機能回復の評価指標として退院時の測定値と術後1ヶ月時点の測定値の差分の値を使用した。統計学的検討は性別ごとに骨折前の外出状況と機能回復に関する差分値の間でPearsonの相関分析もしくはSpearmanの順位相関分析を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象者は34名(女性22名),入院時の術後日数(平均値±標準偏差)は22.8±7.5日 退院時の術後日数は75.8±15.4日であった。年齢は男性78.7±6.6歳,女性83.6±5.9歳,HDS-Rは男性26.8±2.5点,女性25.5±2.8点であった。男性は骨折前のBIは全員100点,LSAは61.7±20.8点,1週間あたりの外出件数/頻度は2.6±1.3件/6.9±5.4回,買い物は1.0件/3.3回,趣味は0.9件/3.1回であった。機能回復に関して,退院時と術後1ヶ月時点の差分は膝伸展筋力体重比の健側は4.1%,患側9.9%,10m歩行は-5.8秒,5回立ち座りは-4.9秒であった。外出状況と機能回復との関連は,買い物頻度と5回立ち座りに有意な強い相関を認めた(r=-0.74)。女性は骨折前のBIは97.5±5.1点,LSAは45.6±12.7点,外出件数/頻度は2.6±1.4件/6.4±4.5回,買い物は1.4件/3.8回,趣味は0.4件/1.4回であった。機能回復に関して,膝伸展筋力体重比の健側は2.9%,患側は5.2%,10m歩行は-4.9秒,5回立ち座りは-6.8秒であった。外出状況と機能回復との関連は,LSAと膝伸展筋力体重比(健側),外出頻度と膝伸展筋力体重比(患側),買い物頻度と膝伸展筋力体重比(患側),買い物頻度と10m歩行の間で有意な中等度の相関を認めた(相関係数絶対値0.42~0.50)。なお,男女とも差分値と年齢,HDS-Rに有意な相関を認めなかった。

【結論】

大腿骨近位部骨折患者の骨折前の外出状況と機能回復を検討し,男女とも買い物の頻度が機能回復と関連していた。買い物では屋外の不整地や人の多い場所で歩行することが多い。そのようなことを行い,なおかつ屋外での活動が多かった高齢者は男女ともに機能回復が優れていることが示唆された。