第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P11

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-TK-11-2] 腹圧性尿失禁と骨盤臓器脱に対する骨盤底筋体操の効果の検討

渡邊日香里1, 大内みふか2, 平川倫恵3, 加藤久美子4, 鈴木重行1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科, 2.北海道医療大学リハビリテーション科学部理学療法学科, 3.亀田メディカルセンターウロギネコロジーセンター, 4.名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科)

Keywords:腹圧性尿失禁, 骨盤臓器脱, 骨盤底筋

【はじめに,目的】

腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence:以下,SUI),骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:以下,POP)はともに女性において頻発し,生活の質(quality of life:以下,QOL)に多大な影響を及ぼすことが知られている。SUIは労作時や,咳嗽時などに起こる不随意な尿漏れが特徴である。POPは膀胱,子宮,直腸の内,1つ以上の臓器が下垂している疾患であり,POPによる症状として腟内や下腹部の不快感を呈するだけでなく,蓄尿症状,排尿症状,排便症状も有することが報告されている。SUIやPOPに対する骨盤底筋体操は骨盤底筋筋力,各症状,QOLに効果的であることが報告されている。しかし,同期間介入した際の効果をSUI患者とPOP患者について検討した研究はみられない。本研究の目的は,骨盤底筋体操の効果について,SUI患者とPOP患者にて検討することとした。


【方法】

対象者は,SUI患者に対して骨盤底筋体操を行った先行研究に参加した女性18名とPOP患者に対して骨盤底筋体操を行った先行研究に参加した女性27名とし,各研究にて得られたデータを後方視的に解析して12週間の骨盤底筋体操の効果を検討した。評価指標は,骨盤底筋体操前後の骨盤底筋筋力,症状,QOLとした。骨盤底筋筋力は腟内圧計を使用して測定した,骨盤底筋の最大随意収縮時腟圧とした。尿失禁は国際禁制学会質問紙短縮版を使用して調査した。POP群における症状は,国際禁制学会質問紙短縮版に加えてProlapse Quality of Life(以下,P-QOL)にて蓄尿症状,排尿症状,腟や下腹部等の不快感,排便症状について調査した。QOLはSUI群ではKing's Health Questionnaire(以下,KHQ),POP群ではP-QOLを用いた。各指標は介入前後の比較及び症状とQOLの相関を検討した。


【結果】

SUI群では,骨盤底筋最大随意収縮時腟圧は介入前に比べ介入後に有意に向上し,尿失禁は頻度と量ともに改善を認め,QOLはKHQの9領域の内6領域の点数が有意に低下した。また,介入前後にて改善が認められた尿失禁頻度,尿失禁量とQOLの6領域との間に中等度~軽度の相関関係が認められた。一方,POP群では,骨盤底筋最大随意収縮時腟圧は介入前に比べ介入後に有意に向上したが,尿失禁は頻度,量ともに改善を認めなかった。P-QOLによる症状は蓄尿症状,排尿症状において有意に改善し,QOLではP-QOLの9領域のうち5領域の点数が有意に低下した。また,一部の症状とQOLとの間に相関関係が認められたが,その症状は領域ごとに異なった。


【結論】

SUI患者に対する12週間の骨盤底筋体操は,骨盤底筋筋力を向上させ,尿失禁を改善し,一部のQOLを向上させた。一方,POP患者においては,骨盤底筋筋力,一部のQOLが向上したが,尿失禁には効果が認められなかった。