第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-02-3] 高齢肺炎患者を対象とした24時間以内の早期離床に関する後方視的研究

河村健太1,3, 廣瀬由美1, 奥野裕佳子2, 大曽根賢一1, 会田育男1, 冨田和秀3 (1.公益財団法人筑波メディカルセンター病院, 2.茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科, 3.茨城県立医療大学大学院保健医療科学研究科)

Keywords:早期離床, 後期高齢者, 在院日数

【はじめに,目的】日本人の肺炎死亡率は第3位であり,高齢者ほどその割合は高くなっていく。肺炎が治癒しても,併存疾患を抱え基礎体力の低下した高齢者は,在院日数が遷延し,日常生活動作能力(ADL)低下が生じやすいことが推測できる。肺炎患者の早期離床は在院日数の短縮やADLの維持に影響を与えることは先行研究で報告されている(前本ら,2007)。しかし,24時間以内の早期離床(Very Early Mobilization:VEM)について検討した報告は少なく,明らかになっているとは言えない。本研究の目的は肺炎高齢患者へのVEMが在院日数やADL低下に与える影響を明らかにすることである。


【方法】本研究は診療録より患者基本情報,入退院情報,疾患・治療情報,リハビリテーション実施情報,ADL情報を後方視的に収集した。対象は2013年4月1日-2015年3月31日の間に当院総合診療科に入院し,リハビリテーションを施行した75歳以上の肺炎患者とした。除外基準として入院中の転科,手術施術,死亡転帰,入院前から全介助,前回退院より72時間以内の再入院とした。統計学的手法は傾向スコアによる逆数重みづけ法を用いた。「VEM群とnon-VEM群」の2群に分け,共変量は年齢,性別,BMI,入院前ADL,認知症の有無,入院前の生活場所,A-DROP,入院時アルブミン値,入院後最大CRP,ステロイド使用の有無,昇圧剤使用の有無として傾向スコアを求めた。それを基に重みづけし,「在院日数」と「入院前に比べた退院時のADLの低下」を一般化推定方程式により共変量の影響が除去された場合の回帰係数の差を検討した。解析にはIBM SPSS Statistics ver.22.0を用いて解析を行った。


【結果】81名が該当し(VEM:31名,non-VEM:50名),退院時のADL低下は58名であった。全体の各項目の中央値は年齢86歳(四分位範囲82-90),A-DROP2点(2-3),入院から理学療法介入まで23時間(17-41),入院から離床まで42時間(19.5-80),在院日数14日(9-25)であった。傾向スコアのC統計量は0.72で概ねモデルの妥当性が得られた。在院日数ではVEMの影響は有意であり(P=0.015),VEMによって在院日数の短縮傾向が示された(オッズ比0.60,95%信頼区間0.40-0.91,標準誤差0.20)。ADL低下へのVEMの影響は有意では無かったが(P=0.114),ADL低下の抑制傾向が示された(オッズ比0.40,95%信頼区間0.12-1.08,標準誤差0.56)。


【結論】肺炎高齢者に対するVEMが在院日数を短縮させる影響があることが示唆され,先行研究と同様の結果が得られた(Mundy LM, 2003)。VEMにより有意なADLの低下を抑制する影響は示されなかった。これは共変量に入れるべき因子の欠落や,収集困難データの欠落などの後方視的研究の限界が要因として挙げられる。本研究の結果より,入院後に速やかな離床機会を設けることで廃用症候群を予防し,早期退院が可能になると考えられる。