第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P02

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-YB-02-4] 肺癌化学療法患者の日常生活動作レベルの変化と栄養状態

―予防的介入における栄養状態評価の意義―

佐藤清登 (IMS(イムス)グループ板橋中央総合病院)

Keywords:がん化学療法, 予防的介入, Prognostic nutritional index

【はじめに,目的】

がんのリハビリテーションガイドラインでは,身体活動性や身体機能(筋力,運動耐用能など)の改善を目的として化学療法中・後の患者に対して予防的介入が推奨されている。しかし,入院化学療法には副作用による食思低下やがん自体による症状に加えて,入院による活動性低下など,身体機能や日常生活動作能力に影響する要因が多く存在する。要因の一つとして,先行研究において低栄養は治療効果や有害事象の発生頻度,予後に大きく関与しているとされている。

今回,当院に入院した肺癌化学療法患者のうち,予防的介入を行った症例を対象とし,介入終了時における日常生活動作レベルの変化と治療開始時の栄養状態との関連をみた。


【方法】

対象は2014年7月から2015年8月の間に肺癌に対して当院へ化学療法または化学放射線療法目的で入院,がん患者リハビリテーション料での算定を行った患者とした。ただし,期間中に複数回入院した患者は1入院につき1名とした。(39名,年齢71.9歳±7.7歳,男女比33:6)除外基準は,介入時に合併症・既往による明らかな運動機能障害を呈する患者,経口摂取が困難である患者とした。項目は,組織型,臨床病期,治療内容,日常生活動作レベルの評価は介入時と終了時のPerformance Status(以下,PS),栄養評価は小野寺らが提唱した栄養学的予後指数(Prognostic nutritional index以下,PNI)を使用して,電子カルテ上より後方視的に調査した。統計学的解析にはスチューデントのt検定を用いた。なお,有意水準はそれぞれ5%未満とした。


【結果】

組織型は非小細胞がん24名(扁平上皮癌13名,腺癌9名,大細胞癌2名),小細胞癌15名,臨床病期はIA期1名,IB期2名,IIB期2名,IIIA期7名,IIIB期4名,IV期23名,治療内容は化学療法のみが37名,化学放射線療法が2名であった。介入時PSは0が11名,1が21名,2が4名,3が3名,終了時PSは0が10名,1が20名,2が5名,3が1名,4が3名,PS維持群が34名,PS低下群は5名であった。PNIはPS維持群平均46.3±6.1,PS低下群平均40.4±6.4であった。


【結論】

PS低下群はPS維持群と比較して,PNIが低い傾向にあった。(p=0.052)

また,PS0~2の症例36例のうち12例がPNI45未満であり,身体機能への影響が推測される。しかし,研究の限界として使用したPSのような順序尺度では,低栄養による身体機能低下を過小評価している恐れがあるため,今後はより感度の高い身体機能評価を行い,検討を行う必要がある。

理学療法士としてがんやがん治療への理解に加えて,患者の栄養状態を把握することは予防的介入において身体活動性・身体機能改善のためのリスク管理として有意義であると考える。