[P-YB-13-3] 回復期リハビリテーション病棟における転倒事例の要因検討
転倒発生のきっかけとその動作による分類
キーワード:転倒, 回復期リハビリテーション病棟, 動作
【はじめに,目的】
転倒の発生要因は,生活環境要因を主とする「外的要因」と,身体的要因を主とする「内的要因」に大別されている(狗飼2006)。その中でも,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)における「外的要因」は,医師や看護師を中心に数多く報告されており(寺西ら2013,川上2015,村井ら2015),「内的要因」は運動機能や認知機能の観点からの報告が多い(山田ら2007,小松2009,田中ら2010)。しかし,転倒発生時の状況そのものの報告は少なく,転倒に至った動作も不明な点が多いのが現状である(饗場ら2015,壇ら2015)。
日常生活動作の改善が得られやすい回復期リハ病棟において(富山2010),転倒に至った動作を分析することは,転倒予防に有効な理学療法プログラムを立案する上で,有益な情報になると考えらえる。
そこで,本研究は回復期リハ病棟における転倒に至った動作と,その他の状況との関連について調査する事を目的とした。
【方法】
本研究はCase series studyの横断研究である。期間は2014年1月1日から同年12月31日の1年間。対象は当院回復期リハ病棟の入院患者のうち,転倒によるインシデントレポートの報告があった240件とした。
転倒をGibsonの定義に基づき「他人による外力,意識消失,脳卒中などにより突然発症した麻痺,てんかん発作によることなく,不注意によって,人が同一平面あるいはより低い平面へ倒れること」とし,定義から外れた報告は除外した。
インシデントレポートの項目から年齢,転倒発生場所,転倒発生状況,原因など,転倒発生に影響すると考えられる項目を抽出した。特に転倒発生状況やその原因から,転倒発生のきっかけ(何をしようとしたか)や転倒関連動作(どの姿勢で,どの方向に転倒したか)を分類した。
【結果】
疾患は脳梗塞92例,脳出血67例,くも膜下出血21例,その他60例,年齢は平均67.1歳(標準偏差16.8歳)であった。
転倒発生場所は病室76%,廊下13%,トイレ5%の順であり,病室での転倒が多かった。転倒発生のきっかけは,「トイレに行こうとした,または戻ろうとした」20%,「物をとろうとした」18%,「移乗しようとした」13%の順であった。発生時の姿勢は坐位35%,不明19%,立位17%,歩行16%の順であった。発生時の姿勢で最も多かった,坐位からの転倒方向は,ずり落ち38%,後方転倒31%,前方転倒20%,側方転倒11%の順であった。
【結論】
転倒研究では歩行を対象としたものが多い(Stephaneら2010,新井ら2010,山田2009)が,回復期リハ病棟を対象とした本研究では坐位からの姿勢変換時に転倒が多かった。
この結果から,患者が坐位から立ち上がり,移動しようとする状況下での転倒が多く,これらの一連の動作が不安定になることが転倒の原因である可能性が示唆された。
転倒予防にはこれらの動作の運動学的解析とそれに基づく理学療法介入が重要である。
転倒の発生要因は,生活環境要因を主とする「外的要因」と,身体的要因を主とする「内的要因」に大別されている(狗飼2006)。その中でも,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)における「外的要因」は,医師や看護師を中心に数多く報告されており(寺西ら2013,川上2015,村井ら2015),「内的要因」は運動機能や認知機能の観点からの報告が多い(山田ら2007,小松2009,田中ら2010)。しかし,転倒発生時の状況そのものの報告は少なく,転倒に至った動作も不明な点が多いのが現状である(饗場ら2015,壇ら2015)。
日常生活動作の改善が得られやすい回復期リハ病棟において(富山2010),転倒に至った動作を分析することは,転倒予防に有効な理学療法プログラムを立案する上で,有益な情報になると考えらえる。
そこで,本研究は回復期リハ病棟における転倒に至った動作と,その他の状況との関連について調査する事を目的とした。
【方法】
本研究はCase series studyの横断研究である。期間は2014年1月1日から同年12月31日の1年間。対象は当院回復期リハ病棟の入院患者のうち,転倒によるインシデントレポートの報告があった240件とした。
転倒をGibsonの定義に基づき「他人による外力,意識消失,脳卒中などにより突然発症した麻痺,てんかん発作によることなく,不注意によって,人が同一平面あるいはより低い平面へ倒れること」とし,定義から外れた報告は除外した。
インシデントレポートの項目から年齢,転倒発生場所,転倒発生状況,原因など,転倒発生に影響すると考えられる項目を抽出した。特に転倒発生状況やその原因から,転倒発生のきっかけ(何をしようとしたか)や転倒関連動作(どの姿勢で,どの方向に転倒したか)を分類した。
【結果】
疾患は脳梗塞92例,脳出血67例,くも膜下出血21例,その他60例,年齢は平均67.1歳(標準偏差16.8歳)であった。
転倒発生場所は病室76%,廊下13%,トイレ5%の順であり,病室での転倒が多かった。転倒発生のきっかけは,「トイレに行こうとした,または戻ろうとした」20%,「物をとろうとした」18%,「移乗しようとした」13%の順であった。発生時の姿勢は坐位35%,不明19%,立位17%,歩行16%の順であった。発生時の姿勢で最も多かった,坐位からの転倒方向は,ずり落ち38%,後方転倒31%,前方転倒20%,側方転倒11%の順であった。
【結論】
転倒研究では歩行を対象としたものが多い(Stephaneら2010,新井ら2010,山田2009)が,回復期リハ病棟を対象とした本研究では坐位からの姿勢変換時に転倒が多かった。
この結果から,患者が坐位から立ち上がり,移動しようとする状況下での転倒が多く,これらの一連の動作が不安定になることが転倒の原因である可能性が示唆された。
転倒予防にはこれらの動作の運動学的解析とそれに基づく理学療法介入が重要である。