第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会企画 » ワークショップ

[HT-2] ワークショップ Evidence Review:心血管理学療法に必要な臨床指標とその意義

2017年5月13日(土) 09:30 〜 10:30 B2会場 (東京ベイ幕張ホール No. 3・4)

司会:内山 覚(新東京病院リハビリテーション室), 司会:松尾 善美(武庫川女子大学健康・スポーツ科学部)

日本心血管理学療法学会企画

[HT-2-2] 運動中のバイタルサイン:病態把握および予後予測として有用性

堀田 一樹 (電気通信大学大学院情報理工学研究科)

二十世紀初めに血圧および心電図の測定法が開発されて以降,運動中の循環制御機構の解明が進んだ。同時に,欧米を中心とした前向きコホート試験により,運動中のバイタルサインと生命予後の関連性が示された。本レビューでは運動負荷に対する心拍数と血圧の反応に着目し,それぞれを病態把握および予後予測の二つの意義に大別し議論する。心不全の病態は低心拍出と肺うっ血に分けられる。血圧は血管抵抗と心拍出量により規定される。通常,骨格筋に酸素供給するために,運動中の心拍出量は増加し,それに伴い血圧も増加する。しかしながら,重度の左室機能障害を有する心不全例においては運動中に血圧が増加しない,あるいは安静時より低下する場合がある。この運動時低血圧は心拍出量の低下を示唆している。冠動脈疾患患者の病態として,心筋における酸素消費量と供給量のミスマッチに伴う心筋虚血症状である。心拍数,および心拍数と収縮期血圧の積である二重積は,運動中の心筋酸素消費量と相関する。したがって,運動中の心拍数および二重積は心負荷の指標であり,心筋虚血症状が出現した時点のこれらの値は心筋虚血閾値として有用である。運動中の心拍数および血圧が健常者,心不全患者,冠動脈疾患患者において全死亡を含めた主要有害心血管イベントの発生リスクを予測するか否かについて検討するために,前向きコホート試験を対象に文献的レビューを行った。その結果,多段階漸増運動負荷試験中の心拍数および収縮期血圧の増加応答が小さい群で予後不良であった。また,運動終了後の心拍数の回復応答が遅延していた群において,予後不良であった。以上のことから,運動中のバイタルサイン指標は心血管理学療法を進めるうえで,病態把握および予後予測に有用な指標である。