第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)企画 » シンポジウム2

[KS-4] シンポジウム2 若手研究者(U39)による最先端研究紹介(2)

2017年5月14日(日) 10:40 〜 11:40 A2会場 (幕張メッセ国際会議場 国際会議室)

座長:金子 文成(札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)企画

[KS-4-2] 脳卒中後の集中的リハビリテーションにおける皮質-脳幹路系の役割

石田 章真 (名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経生理学分野)

脳は軸索により幾重にも編まれた複雑な構造体であり,その機能の発現には構造的・機能的な変化が深く関わる。これは脳障害後の機能回復においても同様であり,脳卒中後のリハビリテーション効果と中枢神経系の再編とも密接な関連があると考えられる。しかし,神経系の可塑的変化と運動機能の変化との関連性を直接的に証明した研究は未だ少数である。本報告では,遺伝学的手法による神経回路操作法を用い,脳卒中後の集中的リハビリテーションにおける運動野-脳幹経路の関与について検証した。

ラットの内包部に出血を生じさせ,1週間麻痺肢を集中的に使用させた。その結果,麻痺肢の運動機能が有意に改善した。加えて,集中使用後には運動野-赤核間の軸索の有意な増加が確認された。この皮質赤核路にレンチウイルスベクター(NeuRet-TRE-EGFP.eTeNT)およびアデノ随伴ウイルスベクター(AAV1-CaMKII-rtTAV16)を注入し,選択的に機能遮断したところ,麻痺肢の集中使用により改善をみせたリーチ機能が再び著明に悪化した。このことから,内包出血後の麻痺肢の集中使用による運動機能回復には,皮質赤核路の代償的増加が直接的に関わることが示された。更に,予め皮質赤核路を遮断した状態で麻痺肢集中使用を行わせたところ,皮質赤核路の増加は起きず,皮質網様体路の著明な増加が認められた。本報告における結果はリハビリテーションにおける皮質-脳幹路系のリクルートメントを示唆するものであり,脳内の大幅な構造変化と機能が因果関係を有することを示すものである。これらはリハビリテーションの作用機序に対する考察において重要な知見であると考える。