[O-MT-02-3] 両側人工膝関節置換術施行患者における縦断的歩行解析
病期に合わせたプロトコールを求めて
Keywords:歩行解析, 縦断研究, TKA
【はじめに,目的】
人工膝関節置換術(以下,TKA)の件数は年々増加しており,近年では両側同時に施行するケースが多くなっている。しかし,そういったケースに対する身体機能を含めた縦断的なスタディは少ない。本研究は両側TKA術後患者を対象に,術後の縦断的な歩行解析とその身体機能との関連を明らかにし,より効率的な理学療法の展開と歩行動作獲得へのプロセスを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は両側TKA術後のケース7例14肢(74.1±7.4歳)とした。術後1,6,12か月の時期に膝関節屈曲角度,等尺性膝関節伸展筋力を身体機能として,TUG,10m歩行,6分間歩行を動作能力として計測した。また自然歩行に関して三次元動作解析装置VICONを用いて解析した。各時期における各機能検査の結果は,一元配置分散分析にて統計解析し,差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法を用い検証した(p<0.05)。
【結果】
術後6ヶ月まで追えたケースは6例12肢,術後12ヶ月まで終えたケースは3例6肢であった。身体機能に関して,膝関節屈曲角度,等尺性膝関節伸展筋力は,術後1か月と比較し術後6,12か月と増加を認めた。動作能力に関して,10m歩行,TUG,6分間歩行はそれぞれ術後6か月に有意な改善を示したが,術後12か月では変化を認めなかった。歩行解析に関して,立脚中期~終期における股関節最大伸展角度に加え,遊脚初期における膝関節最大屈曲角度は経時的に有意な増加を認めた。正常歩行で特徴的なdouble knee actionは術後12か月より全例に認めた。また遊脚初期における膝関節内外反角度は,術後1か月において内反を示したのに対し,術後6,12か月では外反を示した。床反力は術後1か月が一峰性であるのに対し,術後6か月より二峰性を示し,術後12か月ではそれがより顕著となった。
【結論】
術後1か月は身体機能,動作能力がともに低値を示しており,歩行解析においても,変形性膝関節症患者特有の歩容を残すことが示された。術後6か月は身体機能の向上を認めるが,動作能力の改善が著しく,それにともなう歩容の改善も認められ,理学療法アプローチに最適な時期と判断された。術後12か月は身体機能,動作能力の改善こそ少ないものの,歩容はより健常人に近づき,質的な変化が求められる時期と考えられた。
本研究より,術後の各時期に特徴的な歩容を示すことが明らかとなり,病期に合わせたアプローチが必要であり,適切なフォローアップにより健常人に近い歩容も十分に求められる事が示唆された。
人工膝関節置換術(以下,TKA)の件数は年々増加しており,近年では両側同時に施行するケースが多くなっている。しかし,そういったケースに対する身体機能を含めた縦断的なスタディは少ない。本研究は両側TKA術後患者を対象に,術後の縦断的な歩行解析とその身体機能との関連を明らかにし,より効率的な理学療法の展開と歩行動作獲得へのプロセスを明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は両側TKA術後のケース7例14肢(74.1±7.4歳)とした。術後1,6,12か月の時期に膝関節屈曲角度,等尺性膝関節伸展筋力を身体機能として,TUG,10m歩行,6分間歩行を動作能力として計測した。また自然歩行に関して三次元動作解析装置VICONを用いて解析した。各時期における各機能検査の結果は,一元配置分散分析にて統計解析し,差を認めたものに対して多重比較Bonferroni法を用い検証した(p<0.05)。
【結果】
術後6ヶ月まで追えたケースは6例12肢,術後12ヶ月まで終えたケースは3例6肢であった。身体機能に関して,膝関節屈曲角度,等尺性膝関節伸展筋力は,術後1か月と比較し術後6,12か月と増加を認めた。動作能力に関して,10m歩行,TUG,6分間歩行はそれぞれ術後6か月に有意な改善を示したが,術後12か月では変化を認めなかった。歩行解析に関して,立脚中期~終期における股関節最大伸展角度に加え,遊脚初期における膝関節最大屈曲角度は経時的に有意な増加を認めた。正常歩行で特徴的なdouble knee actionは術後12か月より全例に認めた。また遊脚初期における膝関節内外反角度は,術後1か月において内反を示したのに対し,術後6,12か月では外反を示した。床反力は術後1か月が一峰性であるのに対し,術後6か月より二峰性を示し,術後12か月ではそれがより顕著となった。
【結論】
術後1か月は身体機能,動作能力がともに低値を示しており,歩行解析においても,変形性膝関節症患者特有の歩容を残すことが示された。術後6か月は身体機能の向上を認めるが,動作能力の改善が著しく,それにともなう歩容の改善も認められ,理学療法アプローチに最適な時期と判断された。術後12か月は身体機能,動作能力の改善こそ少ないものの,歩容はより健常人に近づき,質的な変化が求められる時期と考えられた。
本研究より,術後の各時期に特徴的な歩容を示すことが明らかとなり,病期に合わせたアプローチが必要であり,適切なフォローアップにより健常人に近い歩容も十分に求められる事が示唆された。