[O-MT-15-4] 人工股関節置換術後早期における股関節外転筋力の回復に影響を及ぼす因子の検討
Keywords:人工股関節, 筋力, 骨盤
【はじめに,目的】人工股関節置換術(以下,THA)術後における股関節外転筋力の機能低下は歩行能力の低下を招くため,術後早期から股関節外転筋力に着目した評価やトレーニングが必要である。このことからTHA術後早期の股関節外転筋力の回復に関連する因子を把握しておくことは,術後のリハビリテーションを実施していく上で重要である。McGroryらはFemoral Offset(以下,FO)がTHA術後平均1年9ヶ月における股関節外転筋力に影響する因子と報告をしているが,術後早期の股関節外転筋力に影響を及ぼす因子に関しては不明な点が多い。本研究の目的は,THA術後早期の股関節外転筋力の回復に影響を及ぼす因子を術前機能及び術前・術後の画像所見から明らかにすることである。
【方法】変形性股関節症によりTHAを施行された75名(年齢64.4±9.2歳,BMI22.8±3.5kg/m2,男性11名,女性64名)を対象とした。術前機能として股関節屈曲・伸展・外転角度,股関節痛(VASを用いて評価)を測定し,画像所見として当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像から,術前の骨盤前傾角度,Crowe分類,手術後のFO,脚延長量,脚長差を測定した。骨盤前傾角度については,骨盤腔の縦径からKitajimaらの回帰式を用いて算出した。さらに,術前と術後2ヶ月に股関節外転筋力を徒手筋力計にて測定し,術前と比較して術後2ヶ月に股関節外転筋力が増加した群(以下,増加群),減少した群(以下,減少群)の2群に分類した。統計解析はχ2検定,対応のないt検定,マン・ホイットニーのU検定,多重ロジスティック回帰分析を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】増加群51名(68.0%),減少群24名(32.0%)で,年齢,BMI,性別については両群間で有意差を認めなかった。骨盤前傾角度は増加群33.0±4.8°,減少群37.5±6.0°であり,増加群の方が減少群と比較して有意に小さい値を示した。また,非術側の股関節外転角度は増加群30.1±8.3°,減少群24.6±9.0°であり,増加群の方が減少群と比較して有意に大きい値を示した。その他の測定項目については両群間で有意差を認めなかった。さらに,股関節外転筋力を従属変数,骨盤前傾角度,非術側の股関節外転角度を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,THA術後早期の股関節外転筋力の回復を規定する最も影響の強い因子として術前の骨盤前傾角度(オッズ比0.84,95%CI:0.74-0.94)が選択された。
【結論】本研究の結果より,術前の骨盤前傾角度が大きい症例では,術後2ヶ月の股関節外転筋力の回復が不良であった。術前の骨盤がより前傾位であると股関節外転筋力の働きが低下するため,術後の股関節外転筋力の回復に影響を及ぼしたと考えられる。これらのことから,THA術後早期に効率的に股関節外転筋力の向上をしていくためには,骨盤がより前傾位となる原因の改善を図りながら,股関節外転筋力のトレーニングを実施していく必要性があると示唆された。
【方法】変形性股関節症によりTHAを施行された75名(年齢64.4±9.2歳,BMI22.8±3.5kg/m2,男性11名,女性64名)を対象とした。術前機能として股関節屈曲・伸展・外転角度,股関節痛(VASを用いて評価)を測定し,画像所見として当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像から,術前の骨盤前傾角度,Crowe分類,手術後のFO,脚延長量,脚長差を測定した。骨盤前傾角度については,骨盤腔の縦径からKitajimaらの回帰式を用いて算出した。さらに,術前と術後2ヶ月に股関節外転筋力を徒手筋力計にて測定し,術前と比較して術後2ヶ月に股関節外転筋力が増加した群(以下,増加群),減少した群(以下,減少群)の2群に分類した。統計解析はχ2検定,対応のないt検定,マン・ホイットニーのU検定,多重ロジスティック回帰分析を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】増加群51名(68.0%),減少群24名(32.0%)で,年齢,BMI,性別については両群間で有意差を認めなかった。骨盤前傾角度は増加群33.0±4.8°,減少群37.5±6.0°であり,増加群の方が減少群と比較して有意に小さい値を示した。また,非術側の股関節外転角度は増加群30.1±8.3°,減少群24.6±9.0°であり,増加群の方が減少群と比較して有意に大きい値を示した。その他の測定項目については両群間で有意差を認めなかった。さらに,股関節外転筋力を従属変数,骨盤前傾角度,非術側の股関節外転角度を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,THA術後早期の股関節外転筋力の回復を規定する最も影響の強い因子として術前の骨盤前傾角度(オッズ比0.84,95%CI:0.74-0.94)が選択された。
【結論】本研究の結果より,術前の骨盤前傾角度が大きい症例では,術後2ヶ月の股関節外転筋力の回復が不良であった。術前の骨盤がより前傾位であると股関節外転筋力の働きが低下するため,術後の股関節外転筋力の回復に影響を及ぼしたと考えられる。これらのことから,THA術後早期に効率的に股関節外転筋力の向上をしていくためには,骨盤がより前傾位となる原因の改善を図りながら,股関節外転筋力のトレーニングを実施していく必要性があると示唆された。