[O-NV-08-5] 能動的注意と受動的注意からみた半側空間無視の病態特性
空間性・非空間性注意を含めた包括的評価の試み
Keywords:半側空間無視, 能動/受動的注意, 非空間性注意機能
【はじめに,目的】
近年,半側空間無視は視覚情報処理における背側/腹側注意ネットワークの機能停滞により生じることが明らかにされている。無視症状自体は空間性注意の障害としてとらえられるが全般的な注意や空間性ワーキングメモリの低下/保続症状など,非空間性注意の合併により,無視症状は多様な症候を呈する。無視症状に多様性があることは臨床経験上よく理解されており,病態基盤を捉える上での包括的な評価を行うことは,極めて重要である。本研究では,PCディスプレイ上のオブジェクトへの,(1)能動的探索(任意順序での選択),(2)受動的探索(点滅に対する反応選択)を行う課題を実施し,両課題の成績を基に,空間性・非空間性注意を含めた包括的評価を試みた。
【方法】
対象は右半球損傷患者143名(66.1±12.8歳,発症後98.9±195.1日)とした。対象者はPCディスプレイ上に配置した計35個(5行7列)のオブジェクトに右示指にてタッチし選択する課題を実施した。能動選択課題として,任意順序によるオブジェクト選択を実施し,受動選択課題として,ランダムな順序で点滅するオブジェクトを選択する課題を実施した。能動/受動課題における非選択数を能動/受動的注意機能の評価変数とし,また,能動課題における複数選択率,受動課題における平均反応時間をそれぞれ空間性作業記憶の低下/保続症状,全般的な注意機能の評価変数として定量化した。
【結果】
両課題の選択不可能だったオブジェクトの空間分布から,能動/受動注意に特異的な無視症状を示す症例を認めた。そのため,両課題の非選択数を基に階層的クラスター分析(ward法)を行った結果,5つのクラスターが抽出された。クラスター1は両課題で非選択数が少ない群であり,対極的な特徴を持つクラスター5は両課題ともに非選択数が多く,複数選択率の増加・平均反応時間の遅延を認めた。クラスター2・4は,受動課題優位に非選択数が多くまた,クラスター4は更に平均反応時間の遅延を合併していた。一方,クラスター3は能動課題優位に非選択数が多く,また高い複数選択率を示した。
【結論】
能動/受動課題の成績から,受動的注意優位の停滞を示す群(クラスター2),受動注意優位の停滞と全般的な注意機能低下を合併する群(クラスター4),能動的注意優位の停滞と空間性作業記憶の低下/保続症状を合併する群(クラスター3),能動/受動双方の機能停滞と空間性作業記憶の低下/保続症状,全般的な注意機能の低下を合併する群(クラスター5)に分類されることが明らかとなった。この分類は,無視症状の発現における,腹側/背側注意ネットワークのいずれか,あるいは双方の機能停滞によるのかを示すと共に,それに合併する非空間性注意機能の低下を反映しており,無視症状の発現機序の解明や機能回復の糸口を探る上での重要な情報を提供するものと考えられる。
近年,半側空間無視は視覚情報処理における背側/腹側注意ネットワークの機能停滞により生じることが明らかにされている。無視症状自体は空間性注意の障害としてとらえられるが全般的な注意や空間性ワーキングメモリの低下/保続症状など,非空間性注意の合併により,無視症状は多様な症候を呈する。無視症状に多様性があることは臨床経験上よく理解されており,病態基盤を捉える上での包括的な評価を行うことは,極めて重要である。本研究では,PCディスプレイ上のオブジェクトへの,(1)能動的探索(任意順序での選択),(2)受動的探索(点滅に対する反応選択)を行う課題を実施し,両課題の成績を基に,空間性・非空間性注意を含めた包括的評価を試みた。
【方法】
対象は右半球損傷患者143名(66.1±12.8歳,発症後98.9±195.1日)とした。対象者はPCディスプレイ上に配置した計35個(5行7列)のオブジェクトに右示指にてタッチし選択する課題を実施した。能動選択課題として,任意順序によるオブジェクト選択を実施し,受動選択課題として,ランダムな順序で点滅するオブジェクトを選択する課題を実施した。能動/受動課題における非選択数を能動/受動的注意機能の評価変数とし,また,能動課題における複数選択率,受動課題における平均反応時間をそれぞれ空間性作業記憶の低下/保続症状,全般的な注意機能の評価変数として定量化した。
【結果】
両課題の選択不可能だったオブジェクトの空間分布から,能動/受動注意に特異的な無視症状を示す症例を認めた。そのため,両課題の非選択数を基に階層的クラスター分析(ward法)を行った結果,5つのクラスターが抽出された。クラスター1は両課題で非選択数が少ない群であり,対極的な特徴を持つクラスター5は両課題ともに非選択数が多く,複数選択率の増加・平均反応時間の遅延を認めた。クラスター2・4は,受動課題優位に非選択数が多くまた,クラスター4は更に平均反応時間の遅延を合併していた。一方,クラスター3は能動課題優位に非選択数が多く,また高い複数選択率を示した。
【結論】
能動/受動課題の成績から,受動的注意優位の停滞を示す群(クラスター2),受動注意優位の停滞と全般的な注意機能低下を合併する群(クラスター4),能動的注意優位の停滞と空間性作業記憶の低下/保続症状を合併する群(クラスター3),能動/受動双方の機能停滞と空間性作業記憶の低下/保続症状,全般的な注意機能の低下を合併する群(クラスター5)に分類されることが明らかとなった。この分類は,無視症状の発現における,腹側/背側注意ネットワークのいずれか,あるいは双方の機能停滞によるのかを示すと共に,それに合併する非空間性注意機能の低下を反映しており,無視症状の発現機序の解明や機能回復の糸口を探る上での重要な情報を提供するものと考えられる。