The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本地域理学療法学会 » 口述発表

[O-TK-07] 口述演題(地域)07

Sun. May 14, 2017 9:00 AM - 10:00 AM A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

座長:藤井 智(横浜市総合リハビリテーションセンター理学作業療法課)

日本地域理学療法学会

[O-TK-07-4] 高齢入院患者における要介護認定の新規申請に影響を与える身体・環境要因の検討

小山 真吾1,2, 堅田 紘頌1, 石山 大介3, 藤茂登 順子2, 木村 鷹介2, 大路 駿介2, 田中 友也2, 音部 雄平2, 佐藤 惇史2, 岡嶌 由紀子2, 谷 直樹2, 山田 実2, 山徳 雅人4 (1.聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 3.聖マリアンナ医科大学東横病院リハビリテーション室, 4.聖マリアンナ医科大学神経内科)

Keywords:高齢者, 要介護認定, 退院支援

【はじめに,目的】

高齢者は入院によりADLが低下し,入院期間が長期化するとされている。一方,急性期病院では機能分化の推進により入院期間の短縮が求められている。そのため,ADLの回復が不十分な状態で退院する高齢者は少なくない。このような背景から急性期病院は医療から介護への円滑な移行を促進するため,高齢入院患者に対して要介護認定新規申請(要介護申請)の必要性を判断し情報提供をする必要がある。しかし,高齢入院患者における要介護申請に影響を与える要因は明らかではない。そこで,本研究の目的は高齢入院患者における要介護申請に影響を与える要因を明らかにすることとした。


【方法】

対象は2009年5月から2016年3月までに当院へ入院した75歳以上の内科疾患患者100例(年齢82.6歳±5.13,女性30%)とした。包含基準は,自宅生活をしていた患者,独歩が可能であった患者,退院時に身体機能評価を行えた患者とし,除外基準は,既に要介護認定を受けている患者,神経筋・脳血管疾患患者,疼痛が運動を阻害している運動器疾患患者,指示理解の得られない認知症患者,癌患者,転居や転院となった患者とした。調査測定項目は,要介護申請の有無,年齢,性別,Body Mass Index(BMI),基礎疾患,Charlson Comorbidity Index,歩行補助具使用の有無,入院期間,リハ開始までの期間,同居者の有無,日中同居者の有無,世帯構成人数,家屋環境,最大歩行速度(MWS)[m/s],握力[kgf],等尺性膝伸展筋力体重比(KE)[kgf/kg],片脚立位時間(OLS)[秒]とした。要介護申請の有無は,入院中に要介護申請が行われた場合,新規申請と定義し,申請群,非申請群の2群に選別した。統計解析は,2群間の比較をχ2検定,t検定,U検定を用いて行った。次に,ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて要介護申請に影響を与える要因を抽出し,その要因であったMWSと日中同居者の有無を組み合わせて4グループ(G1:MWS≧1.0m/s,日中同居。G2:MWS<1.0m/s,日中同居。G3:MWS≧1.0m/s,日中独居。G4:MWS<1.0m/s,日中独居)を作成した。最後に,ロジスティック回帰分析(強制投入法)を用いて,4グループの影響を検討した。なお,有意基準は5%未満とした。


【結果】

100例中,申請群は30例(30%),非申請群は70例(70%)であった。2群間の比較では,BMI,入院期間,腎疾患,同居者の有無,日中同居者の有無,世帯構成人数,MWS,握力,KE,OLSで差を認めた(p<0.05)。ステップワイズ法で抽出されたMWSと日中同居者の有無の組み合わせを独立変数とした強制投入法の結果,G1をリファレンスとした各グループのオッズ比は,G2:2.71(95%CI:0.70-10.55,p=0.15),G3:8.16(95%CI:2.12-31.44,p<0.01),G4:27.80(95%CI:2.26-342.15,p<0.01)となり,日中独居かつ歩行速度低下の組み合わせが強く申請に影響していた。


【結論】

日中独居で歩行速度が1.0m/s未満の高齢入院患者は,要介護認定を申請する傾向が強くなることが明らかとなった。この結果は,退院支援の一助となる可能性が示唆された。