The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-13] ポスター(基礎)P13

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-13-2] VDT作業従事者の肩凝り関連因子の検討
―日常的座位姿勢アライメント,ストレス,生活習慣に着目して―

鳥山 結加1, 鈴木 亨2, 松澤 明黎3, 松原 貴子3 (1.東海記念病院, 2.総合犬山中央病院, 3.日本福祉大学)

Keywords:肩凝り, 姿勢, 生活習慣

【はじめに,目的】肩凝りの有訴者数は年々増加傾向にあり,特に女性,VDT(visual display terminal)作業に従事する事務職者に多い。我々はこれまでに,VDT作業により生じるforward head posture(FHP)のような不良姿勢が肩凝り有訴者の肩凝りを増悪・持続させることを報告したが,作業外の日常的な座位姿勢アライメントの肩凝りへの影響は不明である。一方,肩凝り強度が強い者では,仕事の自覚的負担度や疲労感が強く,心的ストレスや生活習慣の関与が示唆されているが,本邦における事務職者の肩凝り関連因子についての多面的な調査はほとんど行われていない。そこで,VDT作業に従事する事務職者の肩凝りと日常的座位姿勢アライメント,ストレス,生活習慣との関係性について検討した。


【方法】対象は女性事務職者73名(30~49歳)とし,“全く肩凝りを感じない者”または“以前肩凝りを感じたが今は感じない者”を対照群,“常時肩凝りを感じる者”または“週に何回か肩凝りを感じる者”を肩凝り群に分類した。調査項目は,座位姿勢アライメント,1日平均VDT作業時間,コーピング・スキル(TAC-24),身体・心理的ストレス反応(PHRF-SCL),習慣的運動頻度・時間(IPAQ),睡眠時間・満足度,また肩凝り群の自覚的肩凝り強度(VAS)および機能障害度(NDI),肩凝り随伴症状を調べた。なお,姿勢アライメントは直立座位または安楽座位の2条件にて前額・矢状面より撮影し,なで肩(両肩峰を結ぶ線が第2胸椎棘突起以下)の割合および上位頚椎伸展程度(CVA,耳珠-第7頚椎棘突起を結ぶ線と第7頚椎棘突起の水平線のなす角度;低値ほどFHP傾向),上位胸椎屈曲程度(HTA,第7頚椎棘突起-第7胸椎棘突起を結ぶ線と第7胸椎棘突起の水平線のなす角度;低値ほどFHP傾向)について解析した。


【結果】肩凝り群は57名で,その自覚的肩凝り強度VAS 48.9±24.1mm,NDI 7.4±4.5点(「中等度の機能障害」),首筋から背中の“張り感”や頭痛,頭重感などを随伴していた。肩凝り群においてPHRF-SCLの「不安・不確実感」,「疲労・身体反応」が有意に高値,睡眠時間・満足感が有意に低値であったが,姿勢アライメントやVDT作業時間,習慣的運動時間などは両群間で有意差はなかった。


【結論】我々の先行研究において,肩凝り有訴者ではVDT作業により不良姿勢,特に上位頚椎の伸展を伴う“顎を突き出す”FHPを呈することを報告した。今回の調査において,座位姿勢と肩凝りとの関連は認められなかったことから,肩凝りの発症には,日常的な座位姿勢より作業姿勢の方が強く関連することが示唆される。一方,今回対象となった女性事務職の肩凝り有訴者は,中等度の機能障害を呈し,肩凝りのない者と比べて過剰な身体・心理的ストレス応答が出現しており,睡眠障害が認められた。以上より作業中の不良姿勢や日常の過剰なストレス応答,睡眠障害が肩凝り発症の関連因子であると考えられる。